芸術 Artist
この記事は、芸術ビザの要件(条件)、他のビザとの関係、在留期間、変更・更新、申請時の必要書類などについて解説しています。
芸術ビザの申請をお考えの方は、ぜひ参考にしてみてください。
執筆者:行政書士/宇佐見崇
もくじ
1. 芸術ビザとは?
芸術ビザは、芸術家(音楽家・画家・彫刻家・工芸家・作家・写真家など)や芸術の指導者のためのビザ(在留資格)です。
2. 芸術ビザの要件(条件)
芸術ビザは、日本の法律(出入国管理及び難民認定法)で次のように定められています。
日本での活動が次に該当していることが、芸術ビザの要件(条件)となります。
収入を伴う音楽、美術、文学その他の芸術上の活動(2の表の興行の項の下欄に掲げる活動を除く。)
出入国管理及び難民認定法 別表第1の1の表
- 収入を伴う芸術上の活動(興行ビザの活動を除く)が該当します。
おもに、次のような者としての活動が対象となります。
①創作活動を行う芸術家
作詞・作曲などを行う音楽家、絵画を制作する画家、立体作品を造形する彫刻家、工芸作品を制作する工芸家、文芸作品を執筆する作家、芸術作品を撮る写真家など
②芸術の指導者
音楽、美術、文学、写真、演劇、舞踏、映画などの芸術上の活動について指導を行う者 - 「音楽、美術、文学」は例示です。
- かっこ書のとおり、収入を伴う芸術上の活動でも、興行ビザの活動(興行に係る活動またはその他の芸能活動)は、芸術ビザには該当しません。
- 日本の大学・日本の大学に準ずる機関・高等専門学校(高専)において、芸術の研究をする活動・研究の指導をする活動・教育をする活動は、教授ビザに該当します。
- 日本の小学校・中学校・義務教育学校・高等学校・中等教育学校・特別支援学校・専修学校・各種学校・設備及び編制に関して各種学校に準ずる教育機関において、芸術の教育をする活動は、教育ビザに該当します。
- 収入を伴わない芸術上の活動は、文化活動ビザに該当します。
- 在留期間は「5年、3年、1年、3ヶ月」の中で、いずれかの期間が決定されます。
- 許可を受けるには、芸術上の活動によって日本で安定した生活をおくることができると認められる必要があり、通常は、芸術家または芸術の指導者としての相当程度の業績を求められます。
また、芸術ビザに該当する活動を行い、その活動のみで日本で安定した生活をおくることのできる十分な収入を得られる必要があります。
3. 変更・更新のガイドライン
在留資格変更許可申請・在留期間更新許可申請は、上記「2. 芸術ビザの要件(条件)」に該当していることに加えて、次の事項が考慮されます。
なお、次の事項は代表的な考慮要素です。これらのすべてに該当する場合でも、すべての事情を総合的に考慮した結果、変更・更新の申請が不許可となることもあります。
- 現に有する在留資格に応じた活動を行っていたこと
申請人である外国人が、現に有する在留資格に応じた活動を行っていたことが必要です。
例えば、除籍・退学後も在留を継続していた留学生については、現に有する在留資格に応じた活動を行わないで在留していたことについて正当な理由がある場合を除き、消極的な要素として評価されます。 - 素行が不良でないこと
素行については、善良であることが前提となり、良好でない場合には消極的な要素として評価されます。
具体的には、退去強制事由に準ずるような刑事処分を受けた行為、不法就労をあっせんするなど出入国在留管理行政上看過することのできない行為を行った場合は、素行が不良であると判断されることとなります。 - 独立の生計を営むに足りる資産または技能を有すること
申請人の生活状況として、日常生活において公共の負担となっておらず、かつ、その有する資産または技能等から見て将来において安定した生活が見込まれること(世帯単位で認められれば足ります。)が求められます。
仮に公共の負担となっている場合でも、在留を認めるべき人道上の理由が認められる場合には、その理由を十分勘案して判断されることとなります。 - 雇用・労働条件が適正であること
日本で就労している(しようとする)場合には、アルバイトを含めその雇用・労働条件が、労働関係法規に適合していることが必要です。
なお、労働関係法規違反により勧告等が行われたことが判明した場合は、通常、申請人である外国人に責はないため、この点を十分に勘案して判断されることとなります。 - 納税義務等を履行していること
納税の義務がある場合には、当該納税義務を履行していることが求められ、納税義務を履行していない場合には消極的な要素として評価されます。
例えば、納税義務の不履行により刑を受けている場合は、納税義務を履行していないと判断されます。
なお、刑を受けていなくても、高額の未納や長期間の未納などが判明した場合も、悪質なものについては同様に取り扱われます。
また、国民健康保険料など、法令によって納付することとされているものについて、高額の未納や長期間の未納などが判明した場合も、悪質なものについては同様に取り扱われます。
- 入管法に定める届出等の義務を履行していること
入管法上の在留資格をもって日本に中長期間在留する外国人の方は、入管法第19条の7から第19条の13まで、第19条の15及び第19条の16に規定する在留カードの記載事項に係る届出、在留カードの有効期間更新申請、紛失等による在留カードの再交付申請、在留カードの返納、所属機関等に関する届出などの義務を履行していることが必要です。
<中長期在留者の範囲>
入管法上の在留資格をもって日本に中長期間在留する外国人で、次の①~⑤のいずれにも該当しない者
① 3ヶ月以下の在留期間が決定された者
② 短期滞在の在留資格が決定された者
③ 外交・公用の在留資格が決定された者
④ ①②③に準ずる者として法務省令で定めるもの
⑤ 入管特例法に基づく特別永住者
2024年10月:在留資格の変更、在留期間の更新許可のガイドライン
4. 芸術ビザの質問
芸術ビザについて、よくある質問をご紹介します。
収入を伴う芸術上の活動が、同時に、「興行に係る活動」や「その他の芸能活動(興行に係る活動以外の芸能活動)」でもあるといったケースがありますが、これは芸術ビザではなく、興行ビザの対象となります。
たとえば、公演を行う劇団・オーケストラ・バレエ団での活動など、興行として行われる芸術上の活動は、芸術ビザではなく、興行ビザとなります。
また、商品・サービスのプロモーションや、商用写真・商用映像の撮影などの活動も、芸能活動として興行ビザとなります。
なお、入管法で、芸術ビザは「興行の項の下欄に掲げる活動を除く」とされています。
収入を伴う音楽、美術、文学その他の芸術上の活動(2の表の興行の項の下欄に掲げる活動を除く。)
出入国管理及び難民認定法 別表第1の1の表
芸術ビザの取得に、学歴(例:音楽大学や美術大学の学位など)はかならず必要なものではありません。
ですが、芸術家または芸術の指導者としての相当程度の業績は求められますので、在留資格認定証明書交付申請や在留資格変更許可申請を行うときは、次の芸術活動上の業績を明らかにする資料を提出する必要があります。
- 芸術上の活動歴を詳細に記載した履歴書 1通
- 次のいずれかで、芸術活動上の業績を明らかにすることができるもの
a. 関係団体からの推薦状 1通
b. 過去の活動に関する報道 適宜
c. 入賞、入選等の実績 適宜
d. 過去の作品等の目録 適宜
e. 上記aからdに準ずるもの 適宜
出入国在留管理局に提出する基本的な申請書類については、次の出入国在留管理庁のページを参照してください。
当事務所では、出入国在留管理庁のページに記載されている基本的な申請書類に加えて、申請理由書や状況に応じた申請書類などを提出しています。
出入国在留管理庁のページに記載されている基本的な申請書類だけでも受け付けてもらえますが、不許可や審査期間の長期化などのリスクを避けるために、申請理由書や状況に応じた申請書類などを提出して、法令の要件をクリアしていることを十分に立証しましょう。
5. 芸術ビザ:まとめ
最後に、芸術ビザの重要ポイントをまとめました。
- 芸術ビザは、芸術家(音楽家・画家・彫刻家・工芸家・作家・写真家など)や芸術の指導者のためのビザ(在留資格)。
- 収入を伴う芸術上の活動が芸術ビザに該当する。
- 収入を伴う芸術上の活動でも、興行ビザの活動(興行に係る活動またはその他の芸能活動)は、芸術ビザには該当しない。
- 日本の大学・日本の大学に準ずる機関・高等専門学校(高専)において、芸術の研究をする活動・研究の指導をする活動・教育をする活動は、教授ビザに該当する。
- 日本の小学校・中学校・義務教育学校・高等学校・中等教育学校・特別支援学校・専修学校・各種学校・設備及び編制に関して各種学校に準ずる教育機関において、芸術の教育をする活動は、教育ビザに該当する。
- 収入を伴わない芸術上の活動は、文化活動ビザに該当する。
- 在留期間は「5年、3年、1年、3ヶ月」の中で、いずれかの期間が決定される。
- 許可を受けるには、芸術家または芸術の指導者としての相当程度の業績が必要。また、芸術ビザに該当する活動だけで、日本で安定した生活をおくることができる十分な収入を得られることも必要。
- 申請書類(必要書類)は、出入国在留管理庁(入管)のページで最新のものを確認する。
>【出入国在留管理庁】各種手続
以上、行政書士が解説しました。芸術ビザのくわしい内容は、無料そうだんでも個別にご案内しています。どうぞお気軽にお声がけください。