日本人の配偶者等 Spouse or Child of Japanese National
この記事は、日本人の配偶者等ビザの要件(条件)、在留期間、申請のポイント、変更・更新、申請時の必要書類、離婚した場合や永住者ビザ(永住権)の取得などについて解説しています。
日本人の配偶者等ビザの申請をお考えの方は、ぜひ参考にしてみてください。
執筆者:行政書士/宇佐見崇
もくじ
1. 日本人の配偶者等ビザとは?
日本人の配偶者等ビザは、①日本人の配偶者(妻・夫)、②日本人の特別養子、③日本人の子として出生した者のためのビザ(在留資格)です。
就労制限がなく、日本人とほぼ同じように仕事をすることができ、飲食店・コンビニ・スーパーでのアルバイトといった、いわゆる単純労働もできるビザです。
2. 日本人の配偶者等ビザの要件(条件)
日本人の配偶者等ビザは、日本の法律(出入国管理及び難民認定法)で次のように定められています。
次の身分または地位に該当していることが、日本人の配偶者等ビザの要件(条件)となります。
日本人の配偶者若しくは特別養子又は日本人の子として出生した者
出入国管理及び難民認定法 別表第2
- 次の身分または地位を有する者としての活動が該当します。
①日本人の配偶者(妻・夫)
②日本人の特別養子
③日本人の子として出生した者
*日本人の配偶者等の「等」は、①日本人の配偶者のほかに、②日本人の特別養子、③日本人の子として出生した者も該当することを意味します。 - 「配偶者」は、現に婚姻している者のことです。
婚約者、内縁の配偶者、相手方の日本人と離婚・死別した者、外国で成立した同性婚の配偶者は含まれません。
法律上の婚姻関係が成立していても、同居し、互いに協力し、扶助しあって社会通念上の夫婦の共同生活を営むという婚姻の実態を伴っていない場合は、日本人の配偶者としての活動を行うとはいえず、日本人の配偶者等ビザに該当しません。
社会通念上の夫婦の共同生活を営むといえるためには、合理的な理由がない限り、同居して生活していることを要するとされています(審査要領)。 - 「特別養子」は、特別養子縁組*により成立した養子です。
普通養子は日本人の配偶者等ビザには該当しません。
特別養子縁組* … 実親との法的な親子関係を解消し、実の子と同じ親子関係を結ぶ制度。家庭裁判所の決定を受けて成立する。 - 「日本人の子として出生した者」は、出生の時に父または母が日本国籍を有する者であった外国人や、出生の前に父が死亡し、その父が死亡の時に日本国籍を有する者であった外国人が該当します。
「子」には、認知された非嫡出子(法律上の婚姻関係がない男女の間に生まれた子)が含まれます。養子は含まれません。
「出生」した場所は、日本国内に限られません。そのため、日本人の子として外国で生まれた子も「日本人の子として出生した者」に該当します。
出生後に父または母が日本国籍を離脱しても「日本人の子として出生した者」に該当します。反対に、出生後に父または母が日本国籍を取得しても「日本人の子として出生した者」には該当しません(このケースは、定住者ビザに該当する可能性があります)。
出生により日本国籍を取得し、その後日本国籍を離脱した元日本人は「日本人の子として出生した者」に該当します。 - 在留期間は「5年、3年、1年、6ヶ月」の中で、いずれかの期間が決定されます。
3. 日本人の配偶者等ビザ:申請のポイント
日本人の配偶者が日本人の配偶者等ビザを取得するには、基本的には、申請の前に日本と本国の両方で婚姻手続を完了している必要があります。
そして、申請の際は次の①②を十分に立証することが重要です。
- 結婚が真実である(偽装結婚ではない)こと
- 結婚生活に安定性・継続性があること
次のケースは特に上記①②を疑問視されやすいため、しっかりと書類を準備してから申請しましょう。
- 出会いから結婚までの期間が短いとき
- 会っている回数が少ないとき
- 交際期間中の写真が少ないとき
- 安定した収入がないとき
- 収入が少ないとき
- 同居する家が狭いとき
- 親族が結婚したことを知らないとき
- 夫婦の年齢差が大きいとき
- 夫婦間に言葉の壁があり、コミュニケーションを上手くとれないとき
- 日本人に外国人と、外国人に日本人との離婚歴があるとき
- 現在のビザの期限がせまっているとき
- 結婚後も長い間離れて暮らしていたとき
- 恋人・結婚紹介所等で知り合ったとき
- SNSやマッチングアプリなどで知り合ったとき
- 出会い系サイトで知り合ったとき
- パブやスナックなど夜のお店で知り合ったとき
- 浮気や不倫から結婚に至ったとき
- 配偶者が結婚後も夜のお店で働くとき
申請書類に虚偽の内容を書いてしまうと、不許可の可能性が大きく上がります。
上記のケースにあてはまる方は、その事実に加えて、それに至った経緯・理由、現在の状況、今後の計画などを具体的に書いて、①②を十分に立証しましょう。
4. 変更・更新のガイドライン
在留資格変更許可申請・在留期間更新許可申請は、上記「2. 日本人の配偶者等ビザの要件(条件)」に該当していることに加えて、次の事項が考慮されます。
なお、次の事項は代表的な考慮要素です。これらのすべてに該当する場合でも、すべての事情を総合的に考慮した結果、変更・更新の申請が不許可となることもあります。
- 現に有する在留資格に応じた活動を行っていたこと
申請人である外国人が、現に有する在留資格に応じた活動を行っていたことが必要です。
例えば、失踪した技能実習生や、除籍・退学後も在留を継続していた留学生については、現に有する在留資格に応じた活動を行わないで在留していたことについて正当な理由がある場合を除き、消極的な要素として評価されます。 - 素行が不良でないこと
素行については、善良であることが前提となり、良好でない場合には消極的な要素として評価されます。
具体的には、退去強制事由に準ずるような刑事処分を受けた行為、不法就労をあっせんするなど出入国在留管理行政上看過することのできない行為を行った場合は、素行が不良であると判断されることとなります。 - 独立の生計を営むに足りる資産または技能を有すること
申請人の生活状況として、日常生活において公共の負担となっておらず、かつ、その有する資産または技能等から見て将来において安定した生活が見込まれること(世帯単位で認められれば足ります。)が求められます。
仮に公共の負担となっている場合でも、在留を認めるべき人道上の理由が認められる場合には、その理由を十分勘案して判断されることとなります。 - 雇用・労働条件が適正であること
日本で就労している(しようとする)場合には、アルバイトを含めその雇用・労働条件が、労働関係法規に適合していることが必要です。
なお、労働関係法規違反により勧告等が行われたことが判明した場合は、通常、申請人である外国人に責はないため、この点を十分に勘案して判断されることとなります。 - 納税義務等を履行していること
納税の義務がある場合には、当該納税義務を履行していることが求められ、納税義務を履行していない場合には消極的な要素として評価されます。
例えば、納税義務の不履行により刑を受けている場合は、納税義務を履行していないと判断されます。
なお、刑を受けていなくても、高額の未納や長期間の未納などが判明した場合も、悪質なものについては同様に取り扱われます。
また、国民健康保険料など、法令によって納付することとされているものについて、高額の未納や長期間の未納などが判明した場合も、悪質なものについては同様に取り扱われます。 - 入管法に定める届出等の義務を履行していること
入管法上の在留資格をもって日本に中長期間在留する外国人の方は、入管法第19条の7から第19条の13まで、第19条の15及び第19条の16に規定する在留カードの記載事項に係る届出、在留カードの有効期間更新申請、紛失等による在留カードの再交付申請、在留カードの返納、所属機関等に関する届出などの義務を履行していることが必要です。
<中長期在留者の範囲>
入管法上の在留資格をもって日本に中長期間在留する外国人で、次の①~⑤のいずれにも該当しない者
① 3ヶ月以下の在留期間が決定された者
② 短期滞在の在留資格が決定された者
③ 外交・公用の在留資格が決定された者
④ ①②③に準ずる者として法務省令で定めるもの
⑤ 入管特例法に基づく特別永住者
2024年10月:在留資格の変更、在留期間の更新許可のガイドライン
5. 日本人の配偶者等ビザの質問
日本人の配偶者等ビザについて、よくある質問をご紹介します。
出入国在留管理局に提出する基本的な申請書類については、次の出入国在留管理庁のページを参照してください。
当事務所では、出入国在留管理庁のページに記載されている基本的な申請書類に加えて、申請理由書や状況に応じた申請書類などを提出しています。
出入国在留管理庁のページに記載されている基本的な申請書類だけでも受け付けてもらえますが、不許可や審査期間の長期化などのリスクを避けるために、申請理由書や状況に応じた申請書類などを提出して、法令の要件をクリアしていることを十分に立証しましょう。
日本人と結婚すると日本人の配偶者等ビザに変更することができますが、「結婚したら変更しなければならない」ということはありません。結婚前のビザで支障がなければ、そのままのビザでOKです。
配偶者等ビザは、結婚生活に安定性・継続性があることが求められ、経済的な面もひとつの要素として考慮されます。一般的には、申請人の滞在費用を支弁する方の直近1年分の住民税の課税(又は非課税)証明書・納税証明書などで収入を確認されます。
ひとつの要素という位置づけで年収いくら以上という決まりはありませんが、一応の目安としては、国民年金の基礎年金の年間受給額(満額)の約78万円×本人に被扶養者を加えた人数とされています。
たとえば、夫婦2人の場合は78万円×2人=年収156万円以上、夫婦と子ども1人の場合は78万円×3人=年収234万円以上が一応の目安となります。
収入がない又は少ないときでも、就職先が決まっている・求職活動中である・預貯金や不動産などの資産がある・親族からの援助を受けられるなど、結婚生活を安定的・継続的に営むことができる要素がありましたら、そのことを記載して裏付けとなる書類を提出しましょう。
日本人の配偶者等ビザは、扶養を受けることが要件とされている家族滞在ビザと異なり、扶養を受ける必要はありません。日本人である配偶者を扶養する外国人も対象となります。
たとえば、日本人の夫が専業主夫で、外国人の妻が仕事をして、その収入で家族で生活しているときでも取得できます。
ただし、夫と妻の両方が無職のときは、結婚生活の安定性・継続性に問題があるとして、不許可の可能性が高くなります。求職活動中の方は、求職活動の状況・職が得られる見込み・失業手当を受けていることなどを記載して、それを裏付ける書類を提出しましょう。
日本と本国の両方で婚姻手続が完了していれば、結婚式を挙げていないという理由で不許可となることはありません。
ただし、結婚式を挙げた夫婦と比べると「結婚が真実である(偽装結婚ではない)こと」について立証する書類が少なくなってしまいます。
結婚式を挙げていなくても結婚パーティーやフォトウエディングなどをしている方は、その写真や書類を提出したり、これから挙式を予定している方は、その予定についての書類を提出するなどして、結婚が真実である(偽装結婚ではない)ことをアピールしましょう。
短期滞在から日本人の配偶者等ビザへの変更は、結婚の真実性や結婚生活の安定性・継続性を疑問視されない場合で、やむを得ない特別の事情があると認められれば許可されます(やむを得ない特別の事情がなければ許可されません)。
たとえば、以前から日本人と交際していた外国人が、婚約者として短期滞在で来日し、その間に婚姻届を提出して夫婦として生活を始め今後も日本で夫婦として生活するときや、子どもの出産が近く夫婦が離れていると出産に悪影響があるときなどは許可される可能性があるかと思います。
なお、90日の短期滞在の方は、申請の際に特例期間*の適用を受けることができます。
配偶者等ビザの初回の在留期間は、1年を決定されることがほとんどです。「1年だったので何か問題があるのでは?」と思われるかもしれませんが、初回から3年が出ることは稀ですので、心配しなくても大丈夫です。
3年が決定されるケースの多くは、ビザの更新を何度か重ねていき、婚姻期間・家族構成などの状況からみて結婚生活の安定性・継続性が見込まれ、かつ、在留状況等に問題がないと判断されたときです。
例: 初回「1年」→ 更新1回目「1年」→ 更新2回目「3年」
なお、在留期間が1年から3年になると、永住者ビザの要件をひとつクリアするため、永住者ビザへの変更が選択肢に入ってきます。
夫婦が別居していても、それのみで在留期間の更新が不許可とはなりません。
別居していることに合理的な理由(例:単身赴任等の仕事上の理由、病気・ケガの治療など)がありましたら、その詳しい説明やそれを裏付ける書類を提出しましょう。
別居までの経緯、別居期間、別居中の関係、行き来の有無、生活費等の協力・扶助の関係の有無などについて審査され、合理性が認められるときは許可されえます。
別居に合理性が認められないときは、さらに、婚姻関係の修復の可能性、婚姻関係を維持・修復する意思の有無などについて審査されます。
日本人の配偶者として日本人の配偶者等ビザで在留する方が、相手方の配偶者と離婚したときは、日本人の配偶者等ビザの該当性が失われ、日本人の配偶者等ビザで在留することが難しくなります。
日本での在留を希望する方は、別のビザへの変更(切り替え)やいったん帰国してから在留資格認定証明書を取得して再来日するなどの方法を検討しましょう。
ビザの変更先としては、仕事をするときの就労ビザ、学校に通うときの留学ビザ、結婚生活が長く日本に生活基盤があるときや監護養育する子がいるなど特別な理由があるときに認められる定住者ビザなどがあります。
また、日本人と再婚するときは現在の日本人の配偶者等ビザの更新、永住者と再婚するときは永住者の配偶者等ビザへの変更、就労ビザの方と再婚するときは家族滞在ビザへの変更も選択肢のひとつです。
離婚したときは、離婚した日から14日以内に、本人が出入国在留管理局へ配偶者に関する届出をする必要があります。うっかり忘れないようにしましょう。
日本人の配偶者や実子等は、特例によって永住者ビザを取得しやすくなっています。
具体的には、永住者ビザを取得するには「原則として引き続き10年以上日本に在留していること」が要件となりますが、日本人の配偶者の方は「実体を伴った婚姻生活が3年以上継続し、かつ、引き続き1年以上日本に在留」していれば、その実子等の方は「1年以上日本に継続して在留」していれば、特別にこの要件をクリアします。
永住権とは?:日本の永住者ビザ(在留資格)を行政書士が解説!
6. 日本人の配偶者等ビザ:まとめ
最後に、日本人の配偶者等ビザの重要ポイントをまとめました。
- 日本人の配偶者等ビザは、①日本人の配偶者(妻・夫)、②日本人の特別養子、③日本人の子として出生した者のためのビザ(在留資格)。
- 就労制限のないビザで、日本人とほぼ同じように仕事をすることができる。飲食店・コンビニ・スーパーでのアルバイトといった、いわゆる単純労働も可能。
- 「配偶者(妻・夫)」は、現に婚姻している者のこと。
婚約者、内縁の配偶者、相手方の日本人と離婚・死別した者、外国で成立した同性婚の配偶者は含まれない。 - 在留期間は「5年、3年、1年、6ヶ月」の中で、いずれかの期間が決定される。
初回の在留期間は「1年」になることが多い。 - ①日本人の配偶者(妻・夫)が日本人の配偶者等ビザを取得するには、基本的には、申請の前に日本と本国の両方で婚姻手続を完了している必要がある。
申請の際は「結婚が真実である(偽装結婚ではない)こと」「結婚生活に安定性・継続性があること」を立証することが重要。
「3. 日本人の配偶者等ビザ:申請のポイント」の「注意すべきケース」にあてはまる場合は、特にしっかりと書類を準備してから申請しよう。 - 申請書類(必要書類)は、出入国在留管理庁(入管)のページで最新のものを確認する。
>【出入国在留管理庁】各種手続 - ①日本人の配偶者(妻・夫)として日本人の配偶者等ビザで在留していて、相手方の配偶者と離婚すると、日本人の配偶者等ビザの該当性が失われ、日本人の配偶者等ビザで在留することが難しくなる。
日本での在留を希望する場合は、別のビザへの変更(切り替え)やいったん帰国してから在留資格認定証明書を取得して再来日するなどの方法を検討しよう。 - 日本人の配偶者は、通常よりも永住者ビザ(永住権)を取得しやすい(必要な在留年数が短縮される)。
以上、行政書士が解説しました。日本人の配偶者等ビザのくわしい内容は、無料そうだんでも個別にご案内しています。どうぞお気軽にお声がけください。