文化活動 Cultural Activities
この記事は、文化活動ビザの要件(条件)、在留期間、変更・更新、申請時の必要書類、アルバイト(資格外活動許可)などについて解説しています。
文化活動ビザの申請をお考えの方は、ぜひ参考にしてみてください。
執筆者:行政書士/宇佐見崇
もくじ
1. 文化活動ビザとは?
文化活動ビザは、下記のいずれかの活動を行う外国人のためのビザ(在留資格)です。
- 収入を伴わない学術上の活動
- 収入を伴わない芸術上の活動
- 日本特有の文化または技芸について専門的な研究を行う活動
- 専門家の指導を受けて日本特有の文化または技芸を修得する活動
2. 文化活動ビザの要件(条件)
文化活動ビザは、日本の法律(出入国管理及び難民認定法)で次のように定められています。
日本での活動が次に該当していることが、文化活動ビザの要件(条件)となります。
収入を伴わない学術上若しくは芸術上の活動又は我が国特有の文化若しくは技芸について専門的な研究を行い若しくは専門家の指導を受けてこれを修得する活動(4の表の留学の項から研修の項までの下欄に掲げる活動を除く。)
出入国管理及び難民認定法 別表第1の3の表
- 次の①から④のいずれかの活動(留学ビザ・研修ビザの活動を除く)が該当します。
① 収入を伴わない学術上の活動
② 収入を伴わない芸術上の活動
③ 日本特有の文化または技芸について専門的な研究を行う活動
④ 専門家の指導を受けて日本特有の文化または技芸を修得する活動
*上記③④の活動には「収入を伴わない」(金銭その他の財産上の利益を得ない)という規定はありませんが、文化活動ビザは就労ビザではありませんので、③④の活動も「収入を伴わない」ものでなければなりません。 - 「収入を伴わない学術上の活動」には、無報酬で行う学問の研究・調査や研究の指導などの活動があります。
たとえば、次のような活動が該当します。
A 外国の大学の教授、准教授、助教、講師等が、無報酬で研究や調査を行う活動
B 外国の研究機関から派遣された者が、無報酬で研究や調査を行う活動
C 大学教授等の指導のもとで、研究生等が、無報酬で研究や調査を行う活動
D 外国の大学に在籍している学生が、無報酬で行うインターンシップ(就業体験)
E 専修学校等として認可を受けていない外国大学の日本分校に入学して教育を受ける活動
*収入を伴うものは、教授ビザや研究ビザなどに該当しえます。 - 「収入を伴わない芸術上の活動」には、無報酬で行う芸術作品の創作や芸術の指導などの活動があります。
外国で創作活動を行う芸術家(音楽家・画家・彫刻家・工芸家・作家・写真家など)が、その活動の一環として日本国内において創作を行う活動や、日本国内において自らが創作した芸術作品を発表する活動なども含まれます。
*収入を伴うものは、芸術ビザや興行ビザなどに該当しえます。 - 「我が国特有の文化若しくは技芸」には、たとえば、生け花、茶道、日本建築、日本画、日本舞踊、日本料理、邦楽、柔道などがあてはまります。
日本固有のものとはいえなくても、日本が形成・発展の上で大きな役割を果たしているもの(例:空手、禅など)も含まれます。 - 「専門家の指導を受けてこれを修得する」は、日本特有の文化または技芸に精通した専門家から個人指導等を受けて修得することを意味します。
- 「専門家」は、単に各分野において免許を有していたり、なにかの肩書を有するだけではなく、反復継続してその分野で指導を行い又は行ったことのある者をいいます。
- 「留学の項から研修の項まで」は、留学ビザと研修ビザの2つを指します。
かっこ書のとおり、留学ビザと研修ビザの活動は、文化活動ビザには該当しません。
たとえば、「専門家の指導を受けて日本特有の文化または技芸を修得する活動」を、学校等の機関において教育を受ける活動として行うときは留学ビザの対象となり、その他の日本の公的機関や一般企業に受け入れられて技能等の修得をする活動として行うときは、研修ビザの対象となります。 - 研究費・奨学金・滞在費等が支給される場合は、その全額が研究目的等に支出されるのであれば「収入を伴わない」といえるため、文化活動ビザの対象となります。
他方で、研究費・滞在費などの名目で支給される場合でも、その金銭の一部が実費として使用されることなく自らのものとなるときは、「収入を伴わない」とはいえないため、文化活動ビザには該当しません。 - 申請の際は、学術上または芸術上の業績を明らかにする資料(関係団体からの推薦状、過去の活動に関する報道、入賞・入選等の実績、過去の論文・作品等の目録など)や、日本に在留した場合の経費支弁能力を証する文書などを提出する必要があります。
- 在留期間は「3年、1年、6ヶ月、3ヶ月」の中で、いずれかの期間が決定されます。
3. 変更・更新のガイドライン
在留資格変更許可申請・在留期間更新許可申請は、上記「2. 文化活動ビザの要件(条件)」に該当していることに加えて、次の事項が考慮されます。
なお、次の事項は代表的な考慮要素です。これらのすべてに該当する場合でも、すべての事情を総合的に考慮した結果、変更・更新の申請が不許可となることもあります。
- 現に有する在留資格に応じた活動を行っていたこと
申請人である外国人が、現に有する在留資格に応じた活動を行っていたことが必要です。
例えば、除籍・退学後も在留を継続していた留学生については、現に有する在留資格に応じた活動を行わないで在留していたことについて正当な理由がある場合を除き、消極的な要素として評価されます。 - 素行が不良でないこと
素行については、善良であることが前提となり、良好でない場合には消極的な要素として評価されます。
具体的には、退去強制事由に準ずるような刑事処分を受けた行為、不法就労をあっせんするなど出入国在留管理行政上看過することのできない行為を行った場合は、素行が不良であると判断されることとなります。 - 独立の生計を営むに足りる資産または技能を有すること
申請人の生活状況として、日常生活において公共の負担となっておらず、かつ、その有する資産または技能等から見て将来において安定した生活が見込まれること(世帯単位で認められれば足ります。)が求められます。
仮に公共の負担となっている場合でも、在留を認めるべき人道上の理由が認められる場合には、その理由を十分勘案して判断されることとなります。 - 雇用・労働条件が適正であること
就労している(しようとする)場合には、アルバイトを含めその雇用・労働条件が、労働関係法規に適合していることが必要です。
なお、労働関係法規違反により勧告等が行われたことが判明した場合は、通常、申請人である外国人に責はないため、この点を十分に勘案して判断されることとなります。 - 納税義務を履行していること
納税の義務がある場合には、当該納税義務を履行していることが求められ、納税義務を履行していない場合には消極的な要素として評価されます。
例えば、納税義務の不履行により刑を受けている場合は、納税義務を履行していないと判断されます。
なお、刑を受けていなくても、高額の未納や長期間の未納などが判明した場合も、悪質なものについては同様に取り扱われます。 - 入管法に定める届出等の義務を履行していること
入管法上の在留資格をもって日本に中長期間在留する外国人の方は、入管法第19条の7から第19条の13まで、第19条の15及び第19条の16に規定する在留カードの記載事項に係る届出、在留カードの有効期間更新申請、紛失等による在留カードの再交付申請、在留カードの返納、所属機関等に関する届出などの義務を履行していることが必要です。
<中長期在留者の範囲>
入管法上の在留資格をもって日本に中長期間在留する外国人で、次の①~⑤のいずれにも該当しない者
① 3ヶ月以下の在留期間が決定された者
② 短期滞在の在留資格が決定された者
③ 外交・公用の在留資格が決定された者
④ ①②③に準ずる者として法務省令で定めるもの
⑤ 入管特例法に基づく特別永住者
在留資格の変更、在留期間の更新許可のガイドライン
4. 文化活動ビザの質問
文化活動ビザについて、よくある質問をご紹介します。
出入国在留管理局に提出する基本的な申請書類については、次の出入国在留管理庁のページを参照してください。
当事務所では、出入国在留管理庁のページに記載されている基本的な申請書類に加えて、申請理由書や状況に応じた申請書類などを提出しています。
出入国在留管理庁のページに記載されている基本的な申請書類だけでも受け付けてもらえますが、不許可や審査期間の長期化などのリスクを避けるために、申請理由書や状況に応じた申請書類などを提出して、法令の要件をクリアしていることを十分に立証しましょう。
外国人を受け入れる機関が、法人ではなく個人の場合でも、文化活動ビザを取得しえます。
たとえば、大学教授等が自身の所属する大学とは係りなく、個人として外国人を呼びよせ、その外国人の学術上の研究や調査といった活動を指導・支援等するといった場合でも、文化活動ビザを取得できます。
インターンシップ(就業体験)の目的で来日する外国の学生のビザは、報酬の有無等により次のようになります。
*インターンシップは、教育課程の一部として行われるため、インターンシップを行う日本の企業に十分な受入体制・指導体制が確保されている必要があります。また、単位の取得が可能である等、学業の一環として行われることが要件となるため、インターンシップの内容と学生の専攻に関連性が認められる必要があります。
出入国在留管理局へ資格外活動許可の申請をして、許可されればアルバイト等をすることができます。
文化活動ビザの方が受ける資格外活動許可は、基本的には、企業等の名称・所在地・業務内容などを個別に指定して許可される個別的許可です。単純労働や風俗営業等はできません。
ただし、外国大学の日本分校・日本研究センター・国立研究開発法人などで留学生と同様の活動を行っている文化活動ビザの方は、単純労働でも週28時間以内(教育機関の長期休業期間は1日8時間以内)でしたら、企業等の名称・所在地・業務内容などを指定されない包括的許可を受けられます。
不法就労にならないように、かならず許可を受けてからその範囲内で働くようにしましょう。
5. 文化活動ビザ:まとめ
最後に、文化活動ビザの重要ポイントをまとめました。
- 文化活動ビザは、下記のいずれかの活動を行う外国人のためのビザ(在留資格)。
①「収入を伴わない学術上の活動」
②「収入を伴わない芸術上の活動」
③「日本特有の文化または技芸について専門的な研究を行う活動」
④「専門家の指導を受けて日本特有の文化または技芸を修得する活動」 - 留学ビザや研修ビザの活動は、文化活動ビザには該当しない。
- ①から④のいずれも「収入を伴わない」(金銭その他の財産上の利益を得ない)活動でなければならない。
- 研究費・奨学金・滞在費等が支給される場合は、その全額が研究目的等に支出されるのであれば「収入を伴わない」といえる。
- ①「収入を伴わない学術上の活動」には、無報酬で行う学問の研究・調査や研究の指導などの活動がある。
- ②「収入を伴わない芸術上の活動」には、無報酬で行う芸術作品の創作や芸術の指導などの活動がある。
- ③④「日本特有の文化または技芸」とは、たとえば、生け花・茶道・日本建築・日本画・日本舞踊・日本料理・邦楽・柔道・空手・禅などが挙げられる。
- 在留期間は「3年、1年、6ヶ月、3ヶ月」の中で、いずれかの期間が決定される。
- 申請の際は「学術上または芸術上の業績を明らかにする資料(関係団体からの推薦状、過去の活動に関する報道、入賞・入選等の実績、過去の論文・作品等の目録など)」や、「日本に在留した場合の経費支弁能力を証する文書」などの提出が必要。
- 申請書類(必要書類)は、出入国在留管理庁(入管)のページで最新のものを確認する。
>【出入国在留管理庁】各種手続 - アルバイトをするには、資格外活動許可が必要。
文化活動ビザで受けられる資格外活動許可は、基本的には、企業等の名称・所在地・業務内容などを個別に指定して許可される個別的許可となる。
単純労働(例:飲食店やコンビニ・スーパーでのアルバイトなど)や風俗営業等はできない。
ただし、外国大学の日本分校・日本研究センター・国立研究開発法人などで留学生と同様の活動を行っている文化活動ビザの方は、単純労働でも週28時間以内(教育機関の長期休業期間は1日8時間以内)であれば、企業等の名称・所在地・業務内容などを指定されない包括的許可を受けられる。
以上、行政書士が解説しました。文化活動ビザのくわしい内容は、無料そうだんでも個別にご案内しています。どうぞお気軽にお声がけください。