介護 Nursing Care
介護ビザは、日本の社会福祉施設や病院・診療所などで、介護職員として働く介護福祉士のためのビザ(在留資格)です。
介護ビザは、2017年9月にスタートした比較的新しいビザです。
2020年4月には上陸基準省令が改正され、介護福祉士の資格を取得したルートにかかわらず認められるようになりました(改正前は、大学・専門学校などの養成施設ルートのみでした)。
もくじ
1. 介護ビザの要件(条件)
介護ビザは、日本の法律(出入国管理及び難民認定法)で次のように定められています。
日本での活動が次に該当していることが、介護ビザの要件(条件)となります。
本邦の公私の機関との契約に基づいて介護福祉士の資格を有する者が介護又は介護の指導を行う業務に従事する活動
出入国管理及び難民認定法 別表第1の2の表
- 「機関」の事業は、適正性・安定性・継続性を認められる必要があります。
適正性は、機関が必要な許認可を得ていることや、違法行為・不正行為を行っていないことが求められます。
安定性・継続性は、機関の経営状況・設立年度・事業規模・事業形態などが重要です。 - 「契約」には、雇用のほか、委任・委託・嘱託などが含まれますが、特定の機関(複数可)との継続的なものでなければなりません。
正社員のほか、派遣社員、契約社員、業務委託・請負といった働き方をする人も対象となります。
契約の内容は、適法なものであること、継続的なものであることが重要です。 - 「介護福祉士の資格」は、社会福祉士及び介護福祉士法で定められている国家資格のことです。
この法律では、介護福祉士とは「介護福祉士の登録を受け、介護福祉士の名称を用いて、専門的知識・技術をもって、身体上または精神上の障害があることにより日常生活を営むのに支障がある者につき心身の状況に応じた介護を行い、並びにその者及びその介護者に対して介護に関する指導を行うことを業とする者をいう」と規定されています。 - 「介護又は介護の指導を行う業務」は、次の業務をいいます。
①要介護者に対する食事・入浴・排泄などの身体介護(喀痰吸引その他のその者が日常生活を営むのに必要な行為であって、医師の指示の下に行われるものを含む)
②要介護者や要支援者からの相談を受け、ケアプランの作成、市区町村・介護サービス事業者・介護施設などと連絡調整を行うこと
③介護の指導
例:介護福祉士の資格のない職員が行う介護業務についての指導、要介護者に対する助言など
*介護の対象者は、高齢者に限定されません。また、活動場所は、介護施設に限定されず訪問介護も可能です。 - 事務員・用務員・清掃員などで、主たる業務が「介護又は介護の指導を行う業務」でないものは、介護ビザに該当しません。
- 介護ビザを取得するには、介護福祉士国家試験に合格(または介護福祉士養成施設を卒業*)し、社会福祉振興・試験センターに介護福祉士の資格の登録申請をして、登録を受ける必要があります。
介護福祉士養成施設を卒業* … 2027年3月31日までに介護福祉士養成施設を卒業した方(令和8年度までの卒業生)については、介護福祉士国家試験に合格していなくても(不合格または不受験でも)、介護福祉士の資格の登録を受けることができます。
*2017年4月1日から2027年3月31日までの介護福祉養成施設の卒業者(平成29年度から令和8年度までの卒業生)で、介護福祉士国家試験に合格していない方の資格登録は、5年の有効期限付きのものとなります。
なお、①5年の有効期限までに介護福祉士国家試験に合格した方、又は②介護福祉士養成施設を卒業した年度の翌年度の4月1日から資格登録の有効期限まで、5年間連続して介護等の業務に従事した方は、引き続き介護福祉士の資格を保持することができます。
>【社会福祉振興・試験センター】平成29年4月1日から令和9年3月31日までに介護福祉士養成施設を卒業した方の介護福祉士経過措置登録の手続きについて - 在留資格認定証明書交付申請・在留資格変更許可申請の際は、介護福祉士の資格の登録を受けた後に交付される介護福祉士登録証(写し)を提出する必要があります。
- 介護福祉士国家試験の情報や介護福祉士の資格登録については、次のページを参照してください。
>【社会福祉振興・試験センター】介護福祉士国家試験
>【社会福祉振興・試験センター】資格登録 - 在留期間は「5年、3年、1年、3ヶ月」の中で、いずれかの期間が決定されます。
2. 介護ビザの上陸許可基準
介護ビザの在留資格認定証明書交付申請は、上記「1. 介護ビザの要件(条件)」に該当していることに加えて、次の上陸許可基準に適合していることが必要です。
なお、在留資格変更許可申請・在留期間更新許可申請についても、上陸許可基準に原則として適合していることが求められます。
申請人が次のいずれにも該当していること。
- 申請人が社会福祉士及び介護福祉士法(昭和62年法律第30号)第40条第2項第5号又は社会福祉士及び介護福祉士法施行規則(昭和62年厚生省令第49号)第21条第3号に該当する場合で、法別表第1の2の表の技能実習の項の下欄に掲げる活動に従事していたときは、当該活動により本邦において修得、習熟又は熟達した技能等の本国への移転に努めるものと認められること。
- 日本人が従事する場合に受ける報酬と同等額以上の報酬を受けること。
上陸基準省令
- ①の規定は、3年以上介護等の実務経験があり実務者研修等(介護福祉士国家試験の実務経験ルート)を修了した方で、かつ、技能実習の活動に従事していた方の場合は、技能実習制度の趣旨から、技能実習で学んだ技能等について本国への移転に努めるものと認められることとしています。
上記の方の場合は、在留資格認定証明書交付申請・在留資格変更許可申請の際に、技能移転に係る申告書の提出を求められます。 - 「社会福祉士及び介護福祉士法(昭和62年法律第30号)第40条第2項」は、介護福祉士国家試験の受験資格についての規定で、その「第5号」では次のように定められています。
3年以上介護等の業務に従事した者であって、文部科学大臣及び厚生労働大臣の指定した学校又は都道府県知事の指定した養成施設において6月以上介護福祉士として必要な知識及び技能を修得したもの - 「社会福祉士及び介護福祉士法施行規則(昭和62年厚生省令第49号)第21条」は、介護福祉士国家試験の受験資格についての規定で、その「第3号」では次のように定められています。
3年以上介護等の業務に従事した者であって、次に掲げる課程のいずれかを修了した後、法第40条第2項第5号に規定する学校又は養成施設において1月以上介護福祉士として必要な知識及び技能を修得したもの
イ 法附則第4条第2項に規定する喀痰かくたん吸引等研修(別表第3第1号の基本研修及び同表第2号の実地研修を除く。)の課程
ロ 介護保険法施行規則(平成11年厚生省令第36号)第22条の23に規定する介護職員初任者研修課程
ハ 介護保険法施行規則の一部を改正する省令(平成18年厚生労働省令第106号)附則第2条の規定による廃止前の訪問介護員に関する省令(ニ及びホにおいて「旧訪問介護員省令」という。)第1条に規定する1級課程
ニ 旧訪問介護員省令第1条に規定する2級課程
ホ 旧訪問介護員省令第1条に規定する3級課程
ヘ 介護保険法施行規則の一部を改正する省令(平成24年厚生労働省令第25号)による改正前の介護保険法施行規則第22条の23第1項に規定する介護職員基礎研修課程
ト イからヘまでに掲げる課程に準ずる課程として厚生労働大臣が認める課程 - 「日本人が従事する場合に受ける報酬と同等額以上」か否かは、基本的には、就労する日本の機関で同じ業務を行う日本人と同等以上の報酬を受けるか否かで判断されます。
他の企業で同種の職種に従事する日本人の平均賃金より明らかに低い報酬で就労している(しようとする)ときは、これに適合しないものとされます。 - 「報酬」は、一定の役務の給付の対価として与えられる反対給付をいいます。
具体的には、原則として基本給と賞与(ボーナス)をいいます。報酬の月額は、1年間従事した場合に受ける基本給・賞与の総額の12分の1で計算します。
通勤手当・扶養手当・住宅手当などの実費弁償の性格を有するもの(課税対象とならないもの)は含みません。扶養手当は、被扶養者の有無による審査上の不平等がないように、報酬に含めないこととされています。
3. 変更・更新のガイドライン
在留資格変更許可申請・在留期間更新許可申請は、上記「1. 介護ビザの要件(条件)」に該当していること、上記「2. 介護ビザの上陸許可基準」に原則として適合していることに加えて、次の事項が考慮されます。
なお、次の事項は代表的な考慮要素です。これらのすべてに該当する場合でも、すべての事情を総合的に考慮した結果、変更・更新の申請が不許可となることもあります。
- 現に有する在留資格に応じた活動を行っていたこと
申請人である外国人が、現に有する在留資格に応じた活動を行っていたことが必要です。
例えば、失踪した技能実習生や、除籍・退学後も在留を継続していた留学生については、現に有する在留資格に応じた活動を行わないで在留していたことについて正当な理由がある場合を除き、消極的な要素として評価されます。 - 素行が不良でないこと
素行については、善良であることが前提となり、良好でない場合には消極的な要素として評価されます。
具体的には、退去強制事由に準ずるような刑事処分を受けた行為、不法就労をあっせんするなど出入国在留管理行政上看過することのできない行為を行った場合は、素行が不良であると判断されることとなります。 - 独立の生計を営むに足りる資産または技能を有すること
申請人の生活状況として、日常生活において公共の負担となっておらず、かつ、その有する資産または技能等から見て将来において安定した生活が見込まれること(世帯単位で認められれば足ります。)が求められます。
仮に公共の負担となっている場合でも、在留を認めるべき人道上の理由が認められる場合には、その理由を十分勘案して判断されることとなります。 - 雇用・労働条件が適正であること
日本で就労している(しようとする)場合には、アルバイトを含めその雇用・労働条件が、労働関係法規に適合していることが必要です。
なお、労働関係法規違反により勧告等が行われたことが判明した場合は、通常、申請人である外国人に責はないため、この点を十分に勘案して判断されることとなります。 - 納税義務等を履行していること
納税の義務がある場合には、当該納税義務を履行していることが求められ、納税義務を履行していない場合には消極的な要素として評価されます。
例えば、納税義務の不履行により刑を受けている場合は、納税義務を履行していないと判断されます。
なお、刑を受けていなくても、高額の未納や長期間の未納などが判明した場合も、悪質なものについては同様に取り扱われます。
また、国民健康保険料など、法令によって納付することとされているものについて、高額の未納や長期間の未納などが判明した場合も、悪質なものについては同様に取り扱われます。 - 入管法に定める届出等の義務を履行していること
入管法上の在留資格をもって日本に中長期間在留する外国人の方は、入管法第19条の7から第19条の13まで、第19条の15及び第19条の16に規定する在留カードの記載事項に係る届出、在留カードの有効期間更新申請、紛失等による在留カードの再交付申請、在留カードの返納、所属機関等に関する届出などの義務を履行していることが必要です。
<中長期在留者の範囲>
入管法上の在留資格をもって日本に中長期間在留する外国人で、次の①~⑤のいずれにも該当しない者
① 3ヶ月以下の在留期間が決定された者
② 短期滞在の在留資格が決定された者
③ 外交・公用の在留資格が決定された者
④ ①②③に準ずる者として法務省令で定めるもの
⑤ 入管特例法に基づく特別永住者
2024年10月:在留資格の変更、在留期間の更新許可のガイドライン
4. 介護ビザの質問
介護ビザについて、よくある質問をご紹介します。
出入国在留管理局に提出する基本的な申請書類については、次の出入国在留管理庁のページを参照してください。
当事務所では、出入国在留管理庁のページに記載されている基本的な申請書類に加えて、申請理由書や状況に応じた申請書類などを提出しています。
出入国在留管理庁のページに記載されている基本的な申請書類だけでも受け付けてもらえますが、不許可や審査期間の長期化などのリスクを避けるために、申請理由書や状況に応じた申請書類などを提出して、法令の要件をクリアしていることを十分に立証しましょう。
介護福祉士の資格は、次の4つのルートから取得(登録)できますが、どのルートから介護福祉士の資格を取得しても介護ビザの許可の対象となります。
- 養成施設ルート
- 実務経験ルート
- 福祉系高校ルート
- 経済連携協定(EPA)ルート
2020年3月以前は①養成施設ルートに限られていましたが、2020年4月1日に介護ビザの上陸基準省令が改正され、介護福祉士の資格を取得したルートにかかわらず認められるようになりました。
基本的には介護福祉士国家試験に合格する必要がありますが、2027年3月31日までに介護福祉士養成施設を卒業した方(令和8年度までの卒業生)については、介護福祉士国家試験に合格していなくても、次の要件のもと介護ビザを取得できます。
- 介護福祉士の資格登録(*)を受けていること
- 日本の機関(社会福祉施設や病院・診療所など)との契約があること
- 介護または介護の指導を行う業務に従事すること
- 日本人が従事する場合に受ける報酬と同等額以上の報酬を受けること
*2017年4月1日から2027年3月31日までの介護福祉養成施設の卒業者(平成29年度から令和8年度までの卒業生)で、介護福祉士国家試験に合格していない方の資格登録は、5年の有効期限付きのものとなります。
なお、①5年の有効期限までに介護福祉士国家試験に合格した方、又は②介護福祉士養成施設を卒業した年度の翌年度の4月1日から資格登録の有効期限まで、5年間連続して介護等の業務に従事した方は、引き続き介護福祉士の資格を保持することができます。
介護ビザを取得するには、登録証(介護福祉士登録証)が必要です。登録証は、社会福祉振興・試験センターに登録申請をして、登録されると送られてきます。
なお、登録証が交付されていない留学生については、次の特別な取扱いがあります。
2027年3月31日(令和8年度)までに介護福祉士養成施設を卒業する留学生や、実務経験ルート・福祉系高校ルートから介護福祉士国家試験に合格した留学生については、卒業または合格した年度の翌年度の4月1日から登録証が交付されるまでの間、介護施設等で就労できるように、特例として特定活動ビザ(告示外特定活動)への変更が認められます。
介護ビザは、在留状況等に問題がなければ、在留期間の更新(延長)が可能です。更新の回数に制限はなく、何度でも更新できます。
◎在留期間を更新するときは、出入国在留管理局へ在留期間更新許可申請を行い許可を受けてください。5年・3年・1年のいずれかの在留期間が決定された方は、在留期間満了日のおおむね3ヶ月前から申請できます。
介護関係の仕事ができるビザは、就労制限のない身分系のビザ*のほかに、おもに次の5つがあります。
③④⑤は名称が似ていて混同しやすいので気をつけましょう。
- 技術・人文知識・国際業務ビザ
就労ビザの中でもっとも一般的なビザ。
福祉系の大学を卒業し、介護サービスを提供する会社に就職する方などが対象となる。
*介護ビザの活動については、技術・人文知識・国際業務ビザには該当しません。 - 介護ビザ
専門的・技術的分野の外国人の受け入れを目的とするビザ。
日本の介護福祉士の資格を有する方が対象となる。
*2027年3月31日までに介護福祉士養成施設を卒業した方(令和8年度までの卒業生)については、介護福祉士国家試験に合格していなくても対象となります。 - 特定技能ビザ
2019年にスタートした、人手不足の産業分野で即戦力となる外国人の受け入れを目的とするビザ。
人手不足の産業分野のひとつに介護分野があり、介護施設などの現場で即戦力となる、一定の技能とある程度の日本語能力がある方が対象となる。 - 技能実習ビザ
日本から外国への技能移転を目的とするビザ。
対象となる職種のひとつに介護職種があり、技能実習生として実習(雇用関係あり)を通して、介護についての技能等を学ぶことができる。 - 特定活動ビザ
◎EPA介護福祉士候補者(告示17・21・22・28・29号)、EPA介護福祉士(告示外特定活動)
日本と経済連携協定(EPA)を結んでいる国との連携強化を目的としたもの。
インドネシア・フィリピン・ベトナムの方が対象。
介護福祉士の資格を取得するまでは、EPA介護福祉士候補者。資格を取得した後は、EPA介護福祉士としての特定活動ビザまたは介護ビザに変更することができる。
◎日本の大学卒業者の幅広い就労活動(告示46号)
2019年に特定活動告示46号に規定された特定活動ビザの一類型。
幅広い業務が対象となり、技術・人文知識・国際業務ビザの対象となる一定水準以上の業務に加えて、日本語を使った身体介護などの現業を行うこともできる。
日本の4年制大学を卒業した方で、高い日本語能力をもつ方などが対象。
身分系のビザ* … 一定の身分または地位を有する者のビザ。永住者ビザ・日本人の配偶者等ビザ・永住者の配偶者等ビザ・定住者ビザの4つのビザが身分系のビザといわれ、いずれも活動制限がなく、日本人とほぼ同じように仕事をすることができる。仕事内容は、飲食店・コンビニ・スーパーでのアルバイトといった、いわゆる単純労働も可能。