技能 Skilled Labor
この記事は、技能ビザの要件(条件)、在留期間、変更・更新、申請時の必要書類、家族の呼びよせなどについて解説しています。
技能ビザの申請をお考えの方は、ぜひ参考にしてみてください。
執筆者:行政書士/宇佐見崇
もくじ
1. 技能ビザとは?
技能ビザは、熟練した技能をもつ、外国料理の調理師(料理人)、外国特有の建設技術者、外国特有製品の職人、ジュエリー職人、動物トレーナー、パイロット、スポーツインストラクター、ソムリエなどのためのビザ(在留資格)です。
2. 技能ビザの要件(条件)
技能ビザは、日本の法律(出入国管理及び難民認定法)で次のように定められています。
日本での活動が次に該当していることが、技能ビザの要件(条件)となります。
本邦の公私の機関との契約に基づいて行う産業上の特殊な分野に属する熟練した技能を要する業務に従事する活動
出入国管理及び難民認定法 別表第1の2の表
- 「本邦の公私の機関」には、会社・国・地方公共団体・独立行政法人・公益法人などの法人のほか、任意団体(*)も含まれます。
日本に事務所・事業所などがある外国の国・地方公共団体(地方政府を含む)・法人なども含まれます。さらに、個人でも、日本に事務所・事業所などがある場合は含まれます。
*任意団体は、法人格がないため、団体として契約の主体にはなれません。 - 機関の事業は、適正性・安定性・継続性を認められる必要があります。
適正性は、機関が必要な許認可を得ていることや、違法行為・不正行為を行っていないことが求められます。
安定性・継続性は、機関の売上げや利益・設立年度・事業規模・事業形態などが重要です。
債務超過の企業・2期連続で赤字の企業・設立されたばかりの新しい企業・個人事務所などは、事業の安定性・継続性の立証が難しいことが多く、通常よりも不許可の可能性が高くなります。 - 「契約」には、雇用のほか、委任・委託・嘱託などが含まれますが、特定の機関(複数可)との継続的なものでなければなりません。
正社員のほか、派遣社員、契約社員、業務委託・請負といった働き方をする人も対象となります。
契約の内容は、適法なものであること、継続的なものであることが重要です。 - 「産業上の特殊な分野」は、外国に特有な産業分野(上陸基準省令1号・2号・3号)、日本よりも外国の方が技能レベルが高い産業分野(上陸基準省令4号・5号・8号・9号)、日本に従事する技能者が少数しかいない産業分野(上陸基準省令6号・7号)のことです。
- 「熟練した技能を要する業務」は、長年の修練と実務経験により身に付けた、熟達した技量を必要とする業務のことです。
- 在留期間は「5年、3年、1年、3ヶ月」の中で、いずれかの期間が決定されます。
3. 技能ビザの上陸許可基準
技能ビザの在留資格認定証明書交付申請は、上記「2. 技能ビザの要件(条件)」に該当していることに加えて、次の上陸許可基準に適合していることが必要です。
なお、在留資格変更許可申請・在留期間更新許可申請についても、上陸許可基準に原則として適合していることが求められます。
*上陸許可基準は、日本で行おうとする活動により異なります。
申請人が次のいずれかに該当し、かつ、日本人が従事する場合に受ける報酬と同等額以上の報酬を受けること。
上陸基準省令
- 申請人が「次」(1号「調理師(料理人)」から9号「ワイン鑑定等」まで)のいずれかに該当し、さらに「日本人が従事する場合に受ける報酬と同等額以上の報酬」を受けることが必要です。
1号「調理師(料理人)」から9号「ワイン鑑定等」までのいずれにも適合しない場合は、技能ビザを取得することはできません(上陸特別許可などで特別に許可されるケースを除く)。 - 「日本人が従事する場合に受ける報酬と同等額以上」か否かは、基本的には、就労する日本の機関で同じ業務を行う日本人と同等以上の報酬を受けるか否かで判断されます。
他の企業で同種の職種に従事する日本人の平均賃金より明らかに低い報酬で就労している(しようとする)ときは、これに適合しないものとされます。 - 「報酬」は、一定の役務の給付の対価として与えられる反対給付をいいます。
具体的には、原則として基本給と賞与(ボーナス)をいいます。報酬の月額は、1年間従事した場合に受ける基本給・賞与の総額の12分の1で計算します。
通勤手当・扶養手当・住宅手当などの実費弁償の性格を有するもの(課税対象とならないもの)は含みません。扶養手当は、被扶養者の有無による審査上の不平等がないように、報酬に含めないこととされています。
1号 調理師(料理人)
料理の調理又は食品の製造に係る技能で外国において考案され我が国において特殊なものを要する業務に従事する者で、次のいずれかに該当するもの(第9号に掲げる者を除く。)
イ 当該技能について10年以上の実務経験(外国の教育機関において当該料理の調理又は食品の製造に係る科目を専攻した期間を含む。)を有する者
ロ 経済上の連携に関する日本国とタイ王国との間の協定附属書7第1部A第5節1(c)の規定の適用を受ける者
上陸基準省令1号
- 1号「調理師(料理人)」は、料理の調理又は食品の製造に係る技能で外国において考案され我が国において特殊なものを必要とする業務に従事する者で、イロのいずれかに該当するもの(9号「ワイン鑑定等」に該当する者を除く)が対象となります。
例:中華料理・インド料理・フランス料理などのレストランの調理師、点心・パン・デザートなどの食品製造会社の調理師・パティシエなど - 「10年以上の実務経験」は、従事する分野の技能についての実務経験(「料理の調理又は食品の製造に係る技能で外国において考案され我が国において特殊なものを要する業務」についての実務経験)です。
たとえば、フランス料理7年とイタリア料理4年の実務経験がある方が、フランス料理のコックとして働こうとするときは、調理師として10年以上の実務経験はありますが、フランス料理(従事する分野の技能)の実務経験が3年足りません。
熟練した技能に係るものではない、本国での義務教育年齢に相当する10代前半の調理師としての経験・アシスタントやヘルパーとしての経験・屋台等での経験などは、実務経験と認められない可能性が高いです。
なお、従事する分野の技能についての実務経験であれば、アメリカ人がフランス料理の実務経験、フランス人が中華料理の実務経験といった場合でも認められることがあります。 - かっこ書のとおり「10年以上の実務経験」には、「外国の教育機関」においてその料理の調理又は食品の製造に係る科目を専攻した期間を含めることができます。
「外国の教育機関」は、外国の教育制度において正規の教育機関として設置されている機関をいいます。 - タイ料理人の場合は、日本とタイの経済連携協定(EPA)により、次の要件を満たせば上記ロに適合します。
①タイ料理人として5年以上の実務経験を有していること(タイ料理人としての技能水準に関する証明書(タイ労働省発行)を取得するための要件を満たすために、教育機関で教育を受けた期間を含む)。
②初級以上のタイ料理人としての技能水準に関する証明書を取得していること。
③日本への入国・一時的な滞在に係る申請を行った日の直前の1年の期間に、タイにおいてタイ料理人として妥当な額の報酬*を受けており、又は受けていたことがあること。
妥当な額の報酬* … 日本国の当局が毎年計算するタイ国内のすべての産業における被用者の平均賃金額を超える額の報酬またはこれに相当するもの(現金によるものに限る)であって、タイ情報技術通信省国家統計局が公表する労働力調査において示される入手可能な最新の統計資料に基づくものをいう。
- 申請にあたっては、入管法の「産業上の特殊な分野に属する熟練した技能を要する業務」といえること、上陸許可基準の「外国において考案され我が国において特殊なものを要する業務」といえることの立証が重要です。
- 料理は熟練した技能を必要とする品目がメニューの相当数を占めていることが必要です。
本格的な料理を提供することを、写真・メニュー表などを提出してアピールしましょう。
特にコース料理の写真とメニュー表の提出は有効です。
*外国に起源があっても日本で特殊なものといえないもの(例:日本で一般に普及している形態のカレーライス・焼肉・ラーメン・ちゃんぽん・皿うどんなど)は、熟練した技能を必要とする品目に含まれません。 - 店舗・事業所は、調理師の技能を十分に発揮できる規模のものが確保されていることが必要です。
店舗・事業所の見取図等を提出しましょう。
店舗の規模は、席数(座席・カウンター席数)等をみて判断されます(高級料理店等を除く)。座席数が30席以上あることは評価されます。
なお、テイクアウト専門店でも許可される可能性はあります。 - 厨房・客席・店舗の外観などの写真も提出するとよいかと思います。
インド料理店やパキスタン料理店では、タンドール(釜)が必須です。
タンドールにも種類があり、それぞれの種類の用途や機能にあった使い方をしているかをチェックされることがあります。
中華料理店では北京ダックの焼き方にも特別な方法があり、その点をチェックされることがあります。 - 店舗では調理師(料理人)以外に、洗い場・給仕(ホール)・会計など専従のスタッフがいることが必要です。
チェーン店等でもそれぞれの店舗ごとに専従のスタッフが必要です。
専従のスタッフがいないときは、調理師が技能ビザに該当しない現業業務を担当すると判断され、不許可となる可能性が高いです。
また、スタッフリストの提出を求められることがあります。
このとき、別の調理師が過去に提出したスタッフリストや在職証明書との整合性(入社年月日等)をチェックされることがあります。 - 実務経験を証明するために提出する在職証明書は、発行日、在職者の氏名・国籍・生年月日・入社日・退職日・在職期間・所属部署・職務上の地位・給与額・職務内容、証明者の所属企業名・所在地・職名・氏名(署名)・連絡先の電話番号(調査が入ったときに、在職証明書の記載内容を間違いなく答えられる部署や担当者の連絡先の電話番号)などを明記してください。
在職証明書の勤務地と外国の住民登録の住所等が一致しないとき、在職中に長期の出国歴があるときは、書類の信ぴょう性を疑われます。
中国の方は、戸口簿・職業資格証書もチェックされます。
その他、実務経験を立証するための書類として、在職当時の写真(例:勤務している様子・店舗等の写真など)の提出も有効です。 - 実務経験は、出入国在留管理局が国際電話で調査を行うほか、現地の日本大使館・領事館等もインタビューを含めて各種調査を行います(実務経験の信ぴょう性・在職証明書を発行した料理店の実在など)。
国際電話で調査が入った際に、電話を受けた方が申請人の本名を知らずに「勤務していない」と答えてしまい、不許可となることもあります。
普段はニックネームで呼んでいたため、本名を知らずに答えてしまうことがあります。 - 技能ビザは、主たる活動として事業の経営を行う活動はできません。
店舗・事業所の賃貸借契約書や営業許可書の名義が、申請人の調理師本人の名義となっているときは、不許可となる可能性が高いです。
2号 建設技術者
外国に特有の建築又は土木に係る技能について10年(当該技能を要する業務に10年以上の実務経験を有する外国人の指揮監督を受けて従事する者の場合にあっては、5年)以上の実務経験(外国の教育機関において当該建築又は土木に係る科目を専攻した期間を含む。)を有する者で、当該技能を要する業務に従事するもの
上陸基準省令2号
- 2号「建設技術者」は、外国に特有の建築又は土木に係る技能を有し、その技能を必要とする業務に従事する者が対象となります。
- 「外国に特有の建築又は土木に係る技能」には、外国に特有の伝統的建築様式に係る技能のほか、外国で新たに考案されて日本にまだ普及していない建築様式・工法に係る技能が含まれます。
例:ゴシック様式、ロマネスク様式、バロック様式、中国式、韓国式、枠組壁工法(ツーバイフォー工法)、輸入石材による直接貼り付け工法、ガラス製造に必要なレンガ溶鉱炉のポルトガル人職人によるレンガの施工・組立など
外国に特有の装飾に係る技能は含まれません。 - 原則として、外国に特有の建築又は土木に係る技能について、10年以上の実務経験が必要となります。
10年の後のかっこ書のとおり、その技能を要する業務に10年以上の実務経験を有する外国人の指揮監督を受けて従事する者の場合は、5年以上の実務経験を有していればOKです。 - 実務経験の後のかっこ書のとおり、実務経験には「外国の教育機関」においてその建築又は土木に係る科目を専攻した期間を含めることができます。
「外国の教育機関」は、外国の教育制度において正規の教育機関として設置されている機関をいいます。 - 枠組壁工法による輸入住宅の建設に従事することを目的とする外国人技能者については、次のいずれにも該当する必要があります。
①外国人技能者の受入目的が単に建設作業に従事させるためというのではなく、日本人技能者に対する指導・技術移転を含むことが明確になっていること。
②住宅建設に必要な資材(ランバー)の主たる輸入相手国(米国、カナダ、オーストラリア、スウェーデン、フィンランド)の国籍を有する者または当該国の永住資格を有する者であること。
③受入企業において輸入住宅の建設に係る具体的計画が明示されており、その計画の遂行に必要な滞在期間があらかじめ申告されていること。
④外国人技能者が従事する分野としては、スーパーバイザー、フレーマー、ドライウォーラー、フィニッシュ・カーペンターのいずれかに属するものであって、日本人技能者でも作業が容易であるような工程に携わるものではないこと。
3号 外国特有製品の製造・修理
外国に特有の製品の製造又は修理に係る技能について10年以上の実務経験(外国の教育機関において当該製品の製造又は修理に係る科目を専攻した期間を含む。)を有する者で、当該技能を要する業務に従事するもの
上陸基準省令3号
- 3号「外国特有製品の製造・修理」は、外国の伝統的製品など外国に特有の製品の製造又は修理に係る技能を有し、その技能を必要とする業務に従事する者が対象となります。
- 「外国に特有の製品」は、日本においてほとんど製造されていないような製品を意味します。
例:ヨーロッパ特有のガラス製品、ペルシャじゅうたんなど - 外国に特有の製品の製造又は修理に係る技能について、10年以上の実務経験が必要となります。
- かっこ書のとおり、実務経験には「外国の教育機関」においてその製品の製造又は修理に係る科目を専攻した期間を含めることができます。
「外国の教育機関」は、外国の教育制度において正規の教育機関として設置されている機関をいいます。 - シューフィッター(生理学的分野から靴を研究し、治療靴を製造するもの)については、解剖学・外科学などの知識を用いて外反母趾等の疾病の予防矯正効果のある靴のデザインを考え、製作していく作業に従事するものは本号の対象となりえます。
4号 宝石・貴金属・毛皮加工
宝石、貴金属又は毛皮の加工に係る技能について10年以上の実務経験(外国の教育機関において当該加工に係る科目を専攻した期間を含む。)を有する者で、当該技能を要する業務に従事するもの
上陸基準省令4号
- 4号「宝石・貴金属・毛皮加工」は、宝石・貴金属・毛皮の加工に係る技能を有し、その技能を必要とする業務に従事する者が対象となります。
- 宝石・貴金属・毛皮の加工に係る技能について、10年以上の実務経験が必要となります。
- かっこ書のとおり、実務経験には「外国の教育機関」においてその加工に係る科目を専攻した期間を含めることができます。
「外国の教育機関」は、外国の教育制度において正規の教育機関として設置されている機関をいいます。 - 本号は、2号「建設技術者」3号「外国特有製品の製造・修理」と異なり、「外国に特有の」という定めはありません。
- 宝石・毛皮については、宝石・毛皮を用いて製品を作る過程だけでなく、原石・動物から宝石・毛皮を作る過程を含みます。
- 皮の加工については毛がついている必要があり、毛皮の加工は認められますが、皮革の加工は認められません。
5号 動物の調教
動物の調教に係る技能について10年以上の実務経験(外国の教育機関において動物の調教に係る科目を専攻した期間を含む。)を有する者で、当該技能を要する業務に従事するもの
上陸基準省令5号
- 5号「動物の調教」は、動物の調教に係る技能を有し、その技能を必要とする業務に従事する者が対象となります。
- 動物の調教に係る技能について、10年以上の実務経験が必要となります。
- かっこ書のとおり、実務経験には「外国の教育機関」において動物の調教に係る科目を専攻した期間を含めることができます。
「外国の教育機関」は、外国の教育制度において正規の教育機関として設置されている機関をいいます。 - 動物の調教に係る技能を有し、その技能を必要とする業務に従事する者でも、サーカスに出演する動物の調教師など「興行に係る活動」については、技能ビザではなく、興行ビザの対象となります。
6号 石油探査・地熱開発・海鉱探査
石油探査のための海底掘削、地熱開発のための掘削又は海底鉱物探査のための海底地質調査に係る技能について10年以上の実務経験(外国の教育機関において石油探査のための海底掘削、地熱開発のための掘削又は海底鉱物探査のための海底地質調査に係る科目を専攻した期間を含む。)を有する者で、当該技能を要する業務に従事するもの
上陸基準省令6号
- 6号「石油探査・地熱開発・海鉱探査」は、石油探査のための海底掘削(くっさく)・地熱開発のための掘削・海底鉱物探査のための海底地質調査に係る技能を有し、その技能を必要とする業務に従事する者が対象となります。
- 「地熱開発のための掘削」は、生産井*や還元井*を掘削する作業のことです。
生産井* … 地熱発電に使用する蒸気を誘導するために掘削された井戸
還元井* … 発電に使用した蒸気・熱水を地下に戻すために掘削された井戸 - 石油探査のための海底掘削・地熱開発のための掘削・海底鉱物探査のための海底地質調査に係る技能について、10年以上の実務経験が必要となります。
- かっこ書のとおり、実務経験には「外国の教育機関」において、石油探査のための海底掘削・地熱開発のための掘削・海底鉱物探査のための海底地質調査に係る科目を専攻した期間を含めることができます。
「外国の教育機関」は、外国の教育制度において正規の教育機関として設置されている機関をいいます。
7号 航空機操縦士
航空機の操縦に係る技能について250時間以上の飛行経歴を有する者で、航空法(昭和27年法律第231号)第2条第18項に規定する航空運送事業の用に供する航空機に乗り組んで操縦者としての業務に従事するもの
上陸基準省令7号
- 7号「航空機操縦士」は、航空機の操縦に係る技能を有し、航空運送事業の用に供する航空機に乗り組んで操縦者としての業務に従事する者が対象となります。
- 航空機の操縦に係る技能について、250時間以上の飛行経歴が必要です。
- 「航空運送事業」は、他人の需要に応じ、航空機を使用して有償で旅客または貨物を運送する事業をいいます(航空法第2条第18項)。
- 「操縦者としての業務に従事する」は、定期運送用操縦士、事業用操縦士、準定期運送用操縦士のいずれかの技能証明を有し、機長または副操縦士として業務に従事するものをいいます。
- 国内線外国人操縦士の場合で、報酬が日本の機関から支払われず、外国のパイロット派遣元会社から支給されるものでも、日本の公私の機関との契約があれば、本号に該当します。
- 航空機関士としての業務は、技術・人文知識・国際業務ビザの対象となります。
8号 スポーツ指導者
スポーツの指導に係る技能について3年以上の実務経験(外国の教育機関において当該スポーツの指導に係る科目を専攻した期間及び報酬を受けて当該スポーツに従事していた期間を含む。)を有する者若しくはこれに準ずる者として法務大臣が告示をもって定める者で、当該技能を要する業務に従事するもの又はスポーツの選手としてオリンピック大会、世界選手権大会その他の国際的な競技会に出場したことがある者で、当該スポーツの指導に係る技能を要する業務に従事するもの
上陸基準省令8号
- 8号「スポーツ指導者」は、次の者が対象となります。
① スポーツの指導に係る技能について3年以上の実務経験(外国の教育機関において当該スポーツの指導に係る科目を専攻した期間及び報酬を受けて当該スポーツに従事していた期間を含む)を有する者で、その技能を必要とする業務に従事するもの
② 上記①に準ずる者として法務大臣が告示をもって定める者で、その技能を必要とする業務に従事するもの
③ スポーツの選手としてオリンピック大会、世界選手権大会その他の国際的な競技会に出場したことがある者で、そのスポーツの指導に係る技能を必要とする業務に従事するもの - 「スポーツ」は、一般的に競技スポーツと生涯スポーツの2種類の概念に分けられますが、本号のスポーツはその両方が含まれます。
- 「外国の教育機関」は、外国の教育制度において正規の教育機関として設置されている機関をいいます。
- 「報酬を受けて当該スポーツに従事していた期間」は、プロスポーツの競技団体に所属し、プロスポーツ選手として報酬(賞金を含む)を受けて活動していた期間のことです。
- 「オリンピック大会、世界選手権大会」は、「国際的な競技会」の例示です。
「国際的な競技会」は、多数の国が自国を代表する選手・チームなどを派遣して開催されるような競技会、又は規模的にこれに準ずるような競技会を意味します(例:ワールドカップ・アジア大会など)。
2国間または特定国間の親善競技会等は、この国際的な競技会には含まれません。 - 【スキーインストラクター】
スキーインストラクターは、スキーの指導に係る技能について国際スキー教師連盟(ISIA)が発行するISIAカードの交付を受けている者は、②「上記①に準ずる者として法務大臣が告示をもって定める者」に該当します。
なお、日本プロスキー教師協会(SIA)が認定するアルペンスキー資格またはこれと同等以上の資格をもつ者は、特定活動ビザ(告示50号)の対象となります。 - 【気功指導】
気功は、体操のように動くことを通じて気を動かし若しくは整え、呼吸によって気を動かし若しくは整える等により肉体的鍛錬を目的とするものと、患部の治療にあたる気功治療の2種類があります。
肉体的鍛錬としての気功運動は、生涯スポーツの概念に含まれると解されることから本号の対象となりますが、病気治療としての気功治療は、スポーツの指導にはあたらず、本号の対象となりません。 - 【ヨガの指導、整体の指導、マッサージの指導】
ヨガは、その内容が熟練した技能を要する業務といえれば、本号の対象となります。単純な整体やマッサージは対象となりません。 - 本号「スポーツ指導者」は、アマチュアスポーツの指導者に限られません。
- プロスポーツの監督・コーチなどで、チームと一体として出場しプロスポーツ選手と共に入国し在留する方は、技能ビザではなく、興行ビザの対象となります。
9号 ワイン鑑定等
ぶどう酒の品質の鑑定、評価及び保持並びにぶどう酒の提供(以下「ワイン鑑定等」という。)に係る技能について5年以上の実務経験(外国の教育機関においてワイン鑑定等に係る科目を専攻した期間を含む。)を有する次のいずれかに該当する者で、当該技能を要する業務に従事するもの
イ ワイン鑑定等に係る技能に関する国際的な規模で開催される競技会(以下「国際ソムリエコンクール」という。)において優秀な成績を収めたことがある者
ロ 国際ソムリエコンクール(出場者が1国につき1名に制限されているものに限る。)に出場したことがある者
ハ ワイン鑑定等に係る技能に関して国(外国を含む。)若しくは地方公共団体(外国の地方公共団体を含む。)又はこれらに準ずる公私の機関が認定する資格で法務大臣が告示をもって定めるものを有する者
上陸基準省令9号
- 9号「ワイン鑑定等」は、ぶどう酒の品質の鑑定、評価及び保持並びにぶどう酒の提供(「ワイン鑑定等」という。)に係る技能を有するイロハのいずれかに該当する者で、その技能を必要とする業務に従事するものが対象となります。
- 「ぶどう酒の品質の鑑定、評価及び保持並びにぶどう酒の提供(以下「ワイン鑑定等」という。)に係る技能」は、これらすべての技能を有する者である必要がありますが、従事する業務については、これらの技能のうちのいずれかを必要とする業務でOKです。
- ワイン鑑定等に係る技能について、5年以上の実務経験が必要となります。
- かっこ書のとおり、実務経験には「外国の教育機関」においてワイン鑑定等に係る科目を専攻した期間を含めることができます。
「外国の教育機関」は、外国の教育制度において正規の教育機関として設置されている機関をいいます。 - イの「優秀な成績を収めたことがある者」は、国際ソムリエコンクールで入賞以上の賞を獲得した者とされています。
- ロは、出場者が1国につき1名に制限されている国際ソムリエコンクールに出場したことがある者です。
- ハの「告示」は、現在ありません。
- ソムリエは、テイスティングだけでなく、ワイン選定・仕入れ・保管・販売・管理等のワインに係る幅広い業務を行うことから、申請人と契約する日本の公私の機関において、これらの内容の飲食関連事業を行っているかチェックされます。
また、小規模の事業所でもソムリエを必要とする事業を行う事業所もあることから、事業所の規模だけでソムリエの技能を十分に発揮できるかの判断は行われません。 - 飲食店の場合は、ソムリエ以外に以外に洗い場・給仕(ホール)・会計など専従のスタッフがいることが必要です。
4. 変更・更新のガイドライン
在留資格変更許可申請・在留期間更新許可申請は、上記「2. 技能ビザの要件(条件)」に該当していること、上記「3. 技能ビザの上陸許可基準」に原則として適合していることに加えて、次の事項が考慮されます。
なお、次の事項は代表的な考慮要素です。これらのすべてに該当する場合でも、すべての事情を総合的に考慮した結果、変更・更新の申請が不許可となることもあります。
- 現に有する在留資格に応じた活動を行っていたこと
申請人である外国人が、現に有する在留資格に応じた活動を行っていたことが必要です。 - 素行が不良でないこと
素行については、善良であることが前提となり、良好でない場合には消極的な要素として評価されます。
具体的には、退去強制事由に準ずるような刑事処分を受けた行為、不法就労をあっせんするなど出入国在留管理行政上看過することのできない行為を行った場合は、素行が不良であると判断されることとなります。 - 独立の生計を営むに足りる資産または技能を有すること
申請人の生活状況として、日常生活において公共の負担となっておらず、かつ、その有する資産または技能等から見て将来において安定した生活が見込まれること(世帯単位で認められれば足ります。)が求められます。
仮に公共の負担となっている場合でも、在留を認めるべき人道上の理由が認められる場合には、その理由を十分勘案して判断されることとなります。 - 雇用・労働条件が適正であること
就労している(しようとする)場合には、アルバイトを含めその雇用・労働条件が、労働関係法規に適合していることが必要です。
なお、労働関係法規違反により勧告等が行われたことが判明した場合は、通常、申請人である外国人に責はないため、この点を十分に勘案して判断されることとなります。 - 納税義務を履行していること
納税の義務がある場合には、当該納税義務を履行していることが求められ、納税義務を履行していない場合には消極的な要素として評価されます。
例えば、納税義務の不履行により刑を受けている場合は、納税義務を履行していないと判断されます。
なお、刑を受けていなくても、高額の未納や長期間の未納などが判明した場合も、悪質なものについては同様に取り扱われます。 - 入管法に定める届出等の義務を履行していること
入管法上の在留資格をもって日本に中長期間在留する外国人の方は、入管法第19条の7から第19条の13まで、第19条の15及び第19条の16に規定する在留カードの記載事項に係る届出、在留カードの有効期間更新申請、紛失等による在留カードの再交付申請、在留カードの返納、所属機関等に関する届出などの義務を履行していることが必要です。
<中長期在留者の範囲>
入管法上の在留資格をもって日本に中長期間在留する外国人で、次の①~⑤のいずれにも該当しない者
① 3ヶ月以下の在留期間が決定された者
② 短期滞在の在留資格が決定された者
③ 外交・公用の在留資格が決定された者
④ ①②③に準ずる者として法務省令で定めるもの
⑤ 入管特例法に基づく特別永住者
在留資格の変更、在留期間の更新許可のガイドライン
5. 技能ビザの質問
技能ビザについて、よくある質問をご紹介します。
出入国在留管理局に提出する基本的な申請書類については、次の出入国在留管理庁のページを参照してください。
当事務所では、出入国在留管理庁のページに記載されている基本的な申請書類に加えて、申請理由書や状況に応じた申請書類などを提出しています。
出入国在留管理庁のページに記載されている基本的な申請書類だけでも受け付けてもらえますが、不許可や審査期間の長期化などのリスクを避けるために、申請理由書や状況に応じた申請書類などを提出して、法令の要件をクリアしていることを十分に立証しましょう。
技能ビザは、他のビザと比べると取得の難しいビザといわれます。
特に実務経験(10年・5年・3年以上など)の要件をクリアすることが難しく、クリアしていても、その立証がハードルとなることがあります。
実務経験は、勤務先等から在職証明書等を入手して証明しますが、たとえば、複数の勤務先から入手する必要がある、以前の勤務先がなかなか発行してくれない、以前の勤務先が無くなってしまっていて入手できないなどで苦労する方も多いです。
なお、在職証明書は過去に虚偽のものが多くみられたことから、真実のものか厳しく調査されます。
技能ビザの「技能」と技術・人文知識・国際業務ビザの「技術」は、次のように意味が異なります。
- 技能 … 一定事項について、主として個人が自己の経験の集積によって有している能力
- 技術 … 一定事項について、学術上の素養等の条件を含めて理論を実際に応用して処理する能力
技能は経験から得た能力、技術は学校で学んだことを実際の仕事に応用する能力といったイメージです。
技能ビザは、上陸許可基準(1号「調理師(料理人)」から9号「ワイン鑑定等」まで)に規定されている業務でないと取得できません(上陸特別許可などで特別に許可されるケースを除く)。
専門的な技能が必要なマッサージ師としての業務は、技能ビザを取得できるようにも思いますが、上陸許可基準に規定がありませんので、残念ながら技能ビザを取得することは難しいです。
外国人マッサージ師の雇用を希望する事業主の方は、身分系のビザ*をお持ちの方や、資格外活動許可を受けている方の雇用を検討してみてください。
◎エステティシャン・ヘアメイク・ネイリストなども同様です。
身分系のビザ* … 一定の身分または地位を有する者のビザ。永住者ビザ・日本人の配偶者等ビザ・永住者の配偶者等ビザ・定住者ビザの4つのビザが身分系のビザといわれ、いずれも就労制限がなく、日本人とほぼ同じように仕事をすることができる。仕事内容は、飲食店・コンビニ・スーパーでのアルバイトといった、いわゆる単純労働も可能。
技能ビザで在留する調理師(料理人)の方が、独立してお店を開くことがありますが、店舗を実質的に経営しながら調理等の業務に従事する活動を行うことは、技能ビザではできませんので注意が必要です。
この場合は、経営・管理ビザや身分系のビザ*などに変更しましょう。
経営・管理ビザは、主たる活動として事業の経営を行い、従たる活動として調理等の業務を行うことは、禁止されていません。
また、身分系のビザは、活動制限がないため、お店を経営しながら調理師として働くこともできます。
身分系のビザ* … 一定の身分または地位を有する者のビザ。永住者ビザ・日本人の配偶者等ビザ・永住者の配偶者等ビザ・定住者ビザの4つのビザが身分系のビザといわれ、いずれも就労制限がなく、日本人とほぼ同じように仕事をすることができる。仕事内容は、飲食店・コンビニ・スーパーでのアルバイトといった、いわゆる単純労働も可能。
6. 技能ビザ:まとめ
最後に、技能ビザの重要ポイントをまとめました。
- 技能ビザは、熟練した技能をもつ、外国料理の調理師(料理人)、外国特有の建設技術者、外国特有製品の職人、ジュエリー職人、動物トレーナー、パイロット、スポーツインストラクター、ソムリエなどのためのビザ(在留資格)。
- 在留資格認定証明書交付申請は、「2. 技能ビザの要件(条件)」に該当していることに加えて、「3. 技能ビザの上陸許可基準」に適合している必要がある。
- 在留資格変更許可申請・在留期間更新許可申請は、「2. 技能ビザの要件(条件)」に該当していること、「3. 技能ビザの上陸許可基準」に原則として適合していることに加えて、「4. 変更・更新のガイドライン」の事項等が考慮される。
- 「3. 技能ビザの上陸許可基準」は、次の1号から9号まである。
1号 調理師(料理人)
2号 建設技術者
3号 外国特有製品の製造・修理
4号 宝石・貴金属・毛皮加工
5号 動物の調教
6号 石油探査・地熱開発・海鉱探査
7号 航空機操縦士
8号 スポーツ指導者
9号 ワイン鑑定等 - 在留期間は「5年、3年、1年、3ヶ月」の中で、いずれかの期間が決定される。
- 申請書類(必要書類)は、出入国在留管理庁(入管)のページで最新のものを確認する。
>【出入国在留管理庁】各種手続 - 家族(妻・夫・子ども)は、家族滞在ビザで日本に呼びよせることができる。
以上、行政書士が解説しました。技能ビザのくわしい内容は、無料そうだんでも個別にご案内しています。どうぞお気軽にお声がけください。