技術・人文知識・国際業務 Engineer/Specialist in Humanities/International Services
この記事は、技術・人文知識・国際業務ビザの仕事や職種、要件(条件)、在留期間、変更・更新、申請時の必要書類、副業やアルバイト(資格外活動許可)まで、まるっと解説しています。
技術・人文知識・国際業務ビザの申請をお考えの方は、ぜひ参考にしてみてください。
執筆者:行政書士/宇佐見崇
もくじ
1. 技術・人文知識・国際業務ビザとは?
技術・人文知識・国際業務ビザは、就労ビザの中でもっとも一般的なビザ(在留資格)で、一定水準以上の専門的な能力を必要とする仕事が該当するビザです。
名称が長いため、頭文字をとって「技人国(ぎじんこく)」という通称で呼ばれることがあります。
2. 技術・人文知識・国際業務ビザの仕事
技術・人文知識・国際業務ビザの、技術は理系の業務、人文知識は文系の業務、国際業務は外国の考え方や感覚が必要な業務があてはまります。
技術の業務
技術に該当するのは、エンジニア・プログラマーなどの理系の業務です。
日本の法律では「理学、工学その他の自然科学の分野に属する技術若しくは知識を要する業務」と規定されています。
システムコンサルタント、システム開発、パッケージソフト・ミドルウェア開発、ネットワーク・サーバ設計、運用・保守・テクニカルサポート、機械・機構設計、回路・システム設計、生産技術・プロセス開発、品質管理、セールスエンジニア・FAEなど
数理科学、物理科学、化学、生物科学、人類学、地質科学、地理学、地球物理学、科学教育、統計学、情報学、核科学、基礎工学、応用物理学、機械工学、電気工学、電子工学、情報工学、土木工学、建築学、金属工学、応用化学、資源開発工学、造船学、計測・制御工学、化学工学、航空宇宙工学、原子力工学、経営工学、農学、農芸化学、林学、水産学、農業経済学、農業工学、畜産学、獣医学、蚕糸学、家政学、地域農学、農業総合科学、生理科学、病理科学、内科系科学、外科系科学、社会医学、歯科学、薬科学など
人文知識の業務
人文知識に該当するのは、営業・経理・貿易・企画などの文系の業務です。
日本の法律では「法律学、経済学、社会学その他の人文科学の分野に属する技術若しくは知識を要する業務」と規定されています。
営業・企画営業、経理・財務、総務・人事・法務・広報、貿易・物流、企画・マーケティング・広告宣伝、コンサルタント、翻訳、通訳、一般企業等で行う教育、デザインなど
語学、文学、哲学、教育学(体育学を含む)、心理学、社会学、歴史学、地域研究、基礎法学、公法学、国際関係法学、民事法学、刑事法学、社会法学、政治学、経済理論、経済政策、国際経済、経済史、財政学・金融論、商学、経営学、会計学、経済統計学など
国際業務
国際業務に該当するのは、翻訳・通訳・語学スクールの講師などの外国の考え方や感覚が必要な業務です。
日本の法律では「外国の文化に基盤を有する思考若しくは感受性を必要とする業務」と規定されています。
翻訳、通訳、語学の指導、広報、宣伝、海外取引業務、服飾に係るデザイン、室内装飾に係るデザイン、商品開発、海外取引業務・服飾に係るデザイン・室内装飾に係るデザイン・商品開発に類似する業務
高い専門性が必要とまではいえない業務の場合は、審査官から単純な業務と評価されないように、ある程度の技術・知識が必要な業務であることや、その技術・知識をいつ・どこで・どのように学び身につけたかを具体的に立証することが重要です。
3. 技術・人文知識・国際業務ビザの要件(条件)
技術・人文知識・国際業務ビザは、日本の法律で次のように定められています。
日本での活動が次に該当していることが、技術・人文知識・国際業務ビザの要件(条件)となります。
本邦の公私の機関との契約に基づいて行う理学、工学その他の自然科学の分野若しくは法律学、経済学、社会学その他の人文科学の分野に属する技術若しくは知識を要する業務又は外国の文化に基盤を有する思考若しくは感受性を必要とする業務に従事する活動(教授、芸術、報道、経営・管理、法律・会計業務、医療、研究、教育、企業内転勤、介護、興行に掲げる活動を除く。)
出入国管理及び難民認定法 別表第1の2の表
- 下線の部分は、上記「2. 技術・人文知識・国際業務ビザの仕事」を参照してください。
- 「本邦の公私の機関」には、会社・国・地方公共団体・独立行政法人・公益法人などの法人のほか、任意団体(*)も含まれます。
日本に事務所・事業所などがある外国の国・地方公共団体(地方政府を含む)・法人なども含まれます。さらに、個人でも、日本に事務所・事業所などがある場合は含まれます。
*任意団体は、法人格がないため、団体として契約の主体にはなれません。 - 機関の事業は、適正性・安定性・継続性を認められる必要があります。
適正性は、機関が必要な許認可を得ていることや、違法行為・不正行為を行っていないことが求められます。
たとえば、中古車を取り扱う企業では古物商許可、派遣事業を営む企業では労働者派遣事業許可を得ている必要があります。
不正行為等で行政指導を受けたことのある企業では、再発防止策を講じていること等の立証が必要なこともあります。
安定性・継続性は、機関の売上げや利益・設立年度・事業規模・事業形態などが重要です。
債務超過の企業・2期連続で赤字の企業・設立されたばかりの新しい企業・個人事務所などは、事業の安定性・継続性の立証が難しいことが多く、通常よりも不許可の可能性が高くなります。 - 「契約」には、雇用のほか、委任・委託・嘱託などが含まれますが、特定の機関(複数可)との継続的なものでなければなりません。
正社員のほか、派遣社員、契約社員、業務委託・請負といった働き方をする人も対象となります。
契約の内容は、適法なものであること、継続的なものであることが重要です。 - 行おうとする活動が、技術・人文知識・国際業務に該当するか否かは、在留期間中の活動全体をみて判断されます。
たとえば、技術・人文知識・国際業務に該当する活動は全体としてみればごく一部で、その他の部分は技術・人文知識・国際業務に該当しない、特段の技術または知識を要しない業務や反復訓練によって可能な業務を行うときは、技術・人文知識・国際業務に該当しないと判断されます。 - 在留期間は「5年、3年、1年、3ヶ月」の中で、いずれかの期間が決定されます。
4. 技術・人文知識・国際業務ビザの上陸許可基準
技術・人文知識・国際業務ビザの在留資格認定証明書交付申請は、上記「3. 技術・人文知識・国際業務ビザの要件(条件)」に該当していることに加えて、次の上陸許可基準に適合していることが必要です。
なお、在留資格変更許可申請・在留期間更新許可申請についても、上陸許可基準に原則として適合していることが求められます。
*上陸許可基準は、技術・人文知識の業務と国際業務とで異なります。
技術・人文知識の上陸許可基準
- 申請人が自然科学又は人文科学の分野に属する技術又は知識を必要とする業務に従事しようとする場合は、従事しようとする業務について、次のいずれかに該当し、これに必要な技術又は知識を修得していること。
ただし、申請人が情報処理に関する技術又は知識を要する業務に従事しようとする場合で、法務大臣が告示をもって定める情報処理技術に関する試験に合格し又は法務大臣が告示をもって定める情報処理技術に関する資格を有しているときは、この限りでない。
イ 当該技術若しくは知識に関連する科目を専攻して大学を卒業し、又はこれと同等以上の教育を受けたこと。
ロ 当該技術又は知識に関連する科目を専攻して本邦の専修学校の専門課程を修了(当該修了に関し法務大臣が告示をもって定める要件に該当する場合に限る。)したこと。
ハ 10年以上の実務経験(大学、高等専門学校、高等学校、中等教育学校の後期課程又は専修学校の専門課程において当該技術又は知識に関連する科目を専攻した期間を含む。)を有すること。 - 日本人が従事する場合に受ける報酬と同等額以上の報酬を受けること。
上陸基準省令
- 技術・人文知識の業務(自然科学または人文科学の分野に属する技術または知識を必要とする業務)に従事しようとする場合に適用されるの基準です。
- 「次のいずれかに該当」とあり、①イロハのうち1つに該当していれば良く、イロハすべてに該当する必要はありません。
- 「ただし」書のとおり、情報処理に関する技術または知識を要する業務に従事しようとする場合で、一定の試験に合格または資格を有しているときは、①に該当する必要はありません。
対象となる試験・資格については、次のページで確認してください。
情報処理技術に関する、日本・中国・フィリピン・ベトナム・ミャンマー・台湾・マレーシア・タイ・モンゴル・バングラデシュの試験、シンガポール・韓国の資格が対象となります。
>【出入国在留管理庁】IT告示 - 「大学」は、短期大学が含まれます。また、日本の大学だけでなく、外国の大学も含まれます。
- 「これと同等以上の教育を受け」は、大学(短期大学を除く)の専攻科・大学院の入学に関して大学卒業者と同等であるとして入学資格が付与される機関、短期大学卒業と同等である高等専門学校(高専)、水産大学校・海技大学校(分校を除く)・航海訓練所・航空大学校・海上保安大学校・海上保安学校・気象大学校・防衛大学校・防衛医科大学校・職業能力開発総合大学校・職業能力開発大学校・航空保安大学校・職業能力開発短期大学校・国立海上技術短期大学校(専修科に限る)・国立看護大学校、指定を受けた外国大学等の日本校の卒業者が該当します。
また、インドのDOEACC(Department of Electronics、Accreditation of Computer Courses)制度の資格レベルA・B・Cを保有する者は「これと同等以上の教育を受け」に適合します。
高等専門学校(高専)と指定を受けた外国大学等の日本校については、次のページを参考にしてください。
>【文部科学省】高等専門学校(高専)について
>【文部科学省】外国大学等の日本校の指定 - 外国で高等教育機関として位置づけられている機関の卒業者や、大学院への飛び入学が認められた者は、通常は「大学を卒業し、又はこれと同等以上の教育を受け」た者に該当するものとして扱われます。
外国で高等教育機関として位置づけられている機関か否かは、各国の教育制度・学校制度における、機関の性格・教育内容・水準をふまえて個別に判断されます。
参考
>【文部科学省】世界の学校体系(ウェブサイト版)
>【文部科学省】飛び入学について
*中国の教育機関の場合、大学(又は学院、うち本科・専科を含む)・専科学校・短期職業大学の卒業者は「大学を卒業」した者に、学位を与えることができる成人教育機関を卒業して学位を取得した者は「これと同等以上の教育を受け」た者に該当するものとして扱われます。 - 「本邦の専修学校の専門課程を修了(当該修了に関し法務大臣が告示をもって定める要件に該当する場合に限る。)」は、日本の専門学校を修了した専門士または高度専門士が該当します。
外国の専門学校や日本の専門学校にあたる外国の教育機関の卒業者、外国で通信教育等により日本の専門学校の教育を受けた専門士などは該当しません。
参考
>【文部科学省】専門士の称号を付与する専修学校
>【文部科学省】高度専門士の称号を付与する専修学校
*次のページの「別紙2(ファッションデザイン教育機関)」の専攻科・コースを卒業した者が、留学ビザから技術・人文知識・国際業務ビザに変更する場合は、「本邦の専修学校の専門課程を修了(当該修了に関し法務大臣が告示をもって定める要件に該当する場合に限る。)」に適合する必要はありません。
>【出入国在留管理庁】「技術・人文知識・国際業務」の在留資格の明確化等について - 「関連する科目を専攻」とあり、業務(業務に必要な技術または知識)と学校で専攻した科目との関連性が必要です。関連性は専攻した学部・学科・コースや実際に履修した科目などをみて判断されます。
関連性の基準は、大学等と専門学校とで異なります。
大学や高等専門学校(高専)は関連性について柔軟に判断されますが、専門学校は相当程度の関連性を求められます(関連性が認められた業務に3年程度従事した者については、関連性について柔軟に判断されます)。 - 「10年以上の実務経験」には、大学・高等専門学校(高専)・高等学校・中等教育学校の後期課程・専門学校で、その技術または知識に関連する科目を専攻した期間を含めることができます(学校を卒業していなくても含めることが可能)。
また、技術・人文知識・国際業務に該当する業務に10年従事したことまでは求められず、関連する業務に従事した期間も含めることができます。
なお、実務経験は職業として従事した期間のことです。学生(夜間学部の学生を除く)のときにアルバイトで従事した期間を含めることはできません。 - 「日本人が従事する場合に受ける報酬と同等額以上」か否かは、基本的には、就労する日本の機関で同じ業務を行う日本人と同等以上の報酬を受けるか否かで判断されます。
他の企業で同種の職種に従事する日本人の平均賃金より明らかに低い報酬で就労している(しようとする)ときは、これに適合しないものとされます。 - 「報酬」は、一定の役務の給付の対価として与えられる反対給付をいいます。
具体的には、原則として基本給と賞与(ボーナス)をいいます。報酬の月額は、1年間従事した場合に受ける基本給・賞与の総額の12分の1で計算します。
通勤手当・扶養手当・住宅手当などの実費弁償の性格を有するもの(課税対象とならないもの)は含みません。扶養手当は、被扶養者の有無による審査上の不平等がないように、報酬に含めないこととされています。
国際業務の上陸許可基準
- 申請人が外国の文化に基盤を有する思考又は感受性を必要とする業務に従事しようとする場合は、次のいずれにも該当していること。
イ 翻訳、通訳、語学の指導、広報、宣伝又は海外取引業務、服飾若しくは室内装飾に係るデザイン、商品開発その他これらに類似する業務に従事すること。
ロ 従事しようとする業務に関連する業務について3年以上の実務経験を有すること。ただし、大学を卒業した者が翻訳、通訳又は語学の指導に係る業務に従事する場合は、この限りでない。 - 日本人が従事する場合に受ける報酬と同等額以上の報酬を受けること。
上陸基準省令
- 国際業務(外国の文化に基盤を有する思考または感受性を必要とする業務)に従事しようとする場合に適用されるの基準です。
- 次のいずれかの業務に従事する必要があります。
翻訳、通訳、語学の指導、広報、宣伝、海外取引業務、服飾に係るデザイン、室内装飾に係るデザイン、商品開発、海外取引業務・服飾に係るデザイン・室内装飾に係るデザイン・商品開発に類似する業務
*上記以外の業務は、国際業務といえるものでも、①イに該当しません。
*上記の業務に従事する場合でも、その業務に必要な科目を専攻して、大学等を卒業した者または日本の専門学校を修了した専門士については、国際業務の上陸許可基準ではなく、技術・人文知識の上陸許可基準が適用されます。
そのため、これらの者については、①ロの実務経験は必要ありません。 - 「翻訳、通訳」は、日本語と外国語の翻訳・通訳に限られません。
たとえば、英語と中国語・ベトナム語と韓国語など、外国語と外国語の組み合わせも含まれます。
ただし、母国語でない外国語の場合は、その言語をいつ・どこで・どのように・どのレベルで修得したかを立証する必要があります。
日本語を含む翻訳・通訳は、日本語能力試験N3やN4の証明書だけでは認められない可能性が高いです。
この場合は、学校等での日本語習得に係る資料(日本語科目でA判定等の高成績を示すものが望ましいです)を提出しましょう。
参考 >【日本語能力試験】N1~N5:認定の目安 - 「語学の指導」は、民間の語学スクールの講師等が該当します。
小学校・中学校・義務教育学校・高等学校・中等教育学校・特別支援学校・専修学校・各種学校・設備及び編制に関して各種学校に準ずる教育機関での語学教育は、教育ビザに該当します。 - 「これら」は、「海外取引業務、服飾若しくは室内装飾に係るデザイン、商品開発」を指しています。「翻訳、通訳、語学の指導、広報、宣伝」は含まれません。
- 「3年以上の実務経験」は、従事しようとする業務と同じ業務の実務経験である必要はありません。関連する業務についてのもので足ります。
実務経験は、職業として従事した期間のことです。学生(夜間学部の学生を除く)のときにアルバイトで従事した期間は含まれません。 - 「ただし」書のとおり、大学を卒業した者が翻訳、通訳、語学の指導に係る業務に従事する場合は、3年以上の実務経験が免除されます(大学での専攻に関係なく免除)。
日本の専門学校を修了した専門士については、実務経験の免除はありません。そのため(「技術・人文知識の上陸許可基準」が適用されるため)、翻訳、通訳、語学の指導に係る業務と専門学校で専攻した科目との相当程度の関連性が必要となります。 - 「大学」は、短期大学が含まれます。また、日本の大学だけでなく、外国の大学も含まれます。
- 「日本人が従事する場合に受ける報酬と同等額以上」か否かは、基本的には、就労する日本の機関で同じ業務を行う日本人と同等以上の報酬を受けるか否かで判断されます。
他の企業で同種の職種に従事する日本人の平均賃金より明らかに低い報酬で就労している(しようとする)ときは、これに適合しないものとされます。 - 「報酬」は、一定の役務の給付の対価として与えられる反対給付をいいます。
具体的には、原則として基本給と賞与(ボーナス)をいいます。報酬の月額は、1年間従事した場合に受ける基本給・賞与の総額の12分の1で計算します。
通勤手当・扶養手当・住宅手当などの実費弁償の性格を有するもの(課税対象とならないもの)は含みません。扶養手当は、被扶養者の有無による審査上の不平等がないように、報酬に含めないこととされています。
5. 変更・更新のガイドライン
在留資格変更許可申請・在留期間更新許可申請は、上記「3. 技術・人文知識・国際業務ビザの要件(条件)」に該当していること、上記「4. 技術・人文知識・国際業務ビザの上陸許可基準」に原則として適合していることに加えて、次の事項が考慮されます。
なお、次の事項は代表的な考慮要素です。これらのすべてに該当する場合でも、すべての事情を総合的に考慮した結果、変更・更新の申請が不許可となることもあります。
- 現に有する在留資格に応じた活動を行っていたこと
申請人である外国人が、現に有する在留資格に応じた活動を行っていたことが必要です。
例えば、除籍・退学後も在留を継続していた留学生については、現に有する在留資格に応じた活動を行わないで在留していたことについて正当な理由がある場合を除き、消極的な要素として評価されます。 - 素行が不良でないこと
素行については、善良であることが前提となり、良好でない場合には消極的な要素として評価されます。
具体的には、退去強制事由に準ずるような刑事処分を受けた行為、不法就労をあっせんするなど出入国在留管理行政上看過することのできない行為を行った場合は、素行が不良であると判断されることとなります。 - 独立の生計を営むに足りる資産または技能を有すること
申請人の生活状況として、日常生活において公共の負担となっておらず、かつ、その有する資産または技能等から見て将来において安定した生活が見込まれること(世帯単位で認められれば足ります。)が求められます。
仮に公共の負担となっている場合でも、在留を認めるべき人道上の理由が認められる場合には、その理由を十分勘案して判断されることとなります。 - 雇用・労働条件が適正であること
就労している(しようとする)場合には、アルバイトを含めその雇用・労働条件が、労働関係法規に適合していることが必要です。
なお、労働関係法規違反により勧告等が行われたことが判明した場合は、通常、申請人である外国人に責はないため、この点を十分に勘案して判断されることとなります。 - 納税義務を履行していること
納税の義務がある場合には、当該納税義務を履行していることが求められ、納税義務を履行していない場合には消極的な要素として評価されます。
例えば、納税義務の不履行により刑を受けている場合は、納税義務を履行していないと判断されます。
なお、刑を受けていなくても、高額の未納や長期間の未納などが判明した場合も、悪質なものについては同様に取り扱われます。 - 入管法に定める届出等の義務を履行していること
入管法上の在留資格をもって日本に中長期間在留する外国人の方は、入管法第19条の7から第19条の13まで、第19条の15及び第19条の16に規定する在留カードの記載事項に係る届出、在留カードの有効期間更新申請、紛失等による在留カードの再交付申請、在留カードの返納、所属機関等に関する届出などの義務を履行していることが必要です。
<中長期在留者の範囲>
入管法上の在留資格をもって日本に中長期間在留する外国人で、次の①~⑤のいずれにも該当しない者
① 3ヶ月以下の在留期間が決定された者
② 短期滞在の在留資格が決定された者
③ 外交・公用の在留資格が決定された者
④ ①②③に準ずる者として法務省令で定めるもの
⑤ 入管特例法に基づく特別永住者
在留資格の変更、在留期間の更新許可のガイドライン
6. 技術・人文知識・国際業務ビザの質問
技術・人文知識・国際業務ビザについて、よくある質問をご紹介します。
出入国在留管理局に提出する基本的な申請書類については、次の出入国在留管理庁のページを参照してください。
当事務所では、出入国在留管理庁のページに記載されている基本的な申請書類に加えて、申請理由書や状況に応じた申請書類などを提出しています。
出入国在留管理庁のページに記載されている基本的な申請書類だけでも受け付けてもらえますが、不許可や審査期間の長期化などのリスクを避けるために、申請理由書や状況に応じた申請書類などを提出して、法令の要件をクリアしていることを十分に立証しましょう。
技術・人文知識・国際業務ビザは、本邦の公私の機関との契約が必要になります。この契約には派遣会社との雇用契約も含まれ、派遣社員として働く方も対象となります。
派遣には常用型派遣*と登録型派遣*がありますが、活動の継続性の観点から、原則として常用型派遣である必要があります。
ただし、登録型派遣でも、許可に係る在留期間内に派遣元との雇用契約に基づき、特定された派遣先において技術・人文知識・国際業務に該当する活動を行うことが見込まれるときは許可されえます。
常用型派遣* … 派遣先の有無にかかわらず派遣会社と雇用契約が結ばれている状態の派遣のこと
登録型派遣* … 派遣先が存在する時のみ派遣会社と雇用契約の関係が生じる状態の派遣のこと
実務研修に技術・人文知識・国際業務に該当しない業務(例:飲食店での接客、工場でのライン作業、小売店での店頭販売など)が含まれる場合でも、それが入社当初に行われる研修の一環で、技術・人文知識・国際業務に該当する業務を行う上で今後かならず必要となるものであり、日本人も入社当初は同様の研修に従事する、といったときは認められます。
くわしくは、次のページの「別紙1(「技術・人文知識・国際業務」の在留資格で許容される実務研修について)」を参照してください。
自動車整備等の業務は、単純な業務とみなされやすいです。
技術・人文知識・国際業務に該当すると認められるには「自動車工学の研究対象である自動車の各構成部分の原理、構造、設計・製造に関する業務」または「自動車のメンテナンス業務のうち、診断・点検などの関連知識をもって判断を行う業務」であることが必要です。
自動車整備の日本の専門学校を修了して整備士として就職する場合は、実務上、自動車整備士2級以上の資格をもち、資格のない整備工や3級整備士に対する指導・監督を行う業務が含まれ、かつ、もっぱら分解・洗浄・部品交換などに従事するものではなく、近い将来整備主任者として従事することが予定されているときは、一定以上の自然科学分野の学術上の素養を要する業務であるとして、技術・人文知識・国際業務の技術に該当するとされます。
ちなみに、もっぱら右ハンドル車を左ハンドル車に改造する作業は、実務上、単純な組立て作業であると評価されていて、技術・人文知識・国際業務に該当しないとされます。
ホテルのフロントでのホテルマンとしての業務は、接客として単純な業務とみなされやすいです。
規模が大きい一流ホテル、高級な観光ホテル・リゾートホテルなどで外国人客が多く利用するホテルの場合は、翻訳・通訳業務や外国人客の新規開拓などに従事するものとして許可されることもありますが、外国人客がそれほど多くないビジネスホテルの場合は難しいです。
申請の際は、ホテルの規模(売上や客室数など)・宿泊客の平均単価・外国人客の利用者数や比率・具体的な業務内容・業務の重要性や専門性・外国人客が利用する言語・申請人の能力の高さなどをできるだけ具体的に書面にし、それを裏付ける資料を添付して提出しましょう。
ホテルや旅館等の宿泊施設での就労を希望する場合は、次のページの「別紙4(ホテル・旅館等において外国人が就労する場合の在留資格の明確化について)」も参考にしてください。
*ベルスタッフ・ドアマン・配膳スタッフ・清掃スタッフなど、単純な業務とみなされるものを主として行う場合は許可されません。
外国人客への通訳(案内)を兼ねたベルスタッフ・ドアマンとして接客を行う場合については、特定活動ビザ(告示46号)を取得できる可能性があります。
デザインの仕事は、学歴や実務経験などの要件をクリアしていれば、無事に許可されるケースが多いです。
ただ、主体的な創作活動を伴わない補助的な業務(アシスタント)については、不許可となる可能性があり注意が必要です。
出入国在留管理庁が公表している、次の許可・不許可事例を参考にしてみてください。
許可事例 アニメーション分野
- 本邦の専門学校においてマンガ・アニメーション科を卒業し、専門士の称号を付与された外国人が、コンピュータ関連サービスを業務とする会社においてキャラクターデザイン等のゲーム開発業務に従事するもの。
- 本邦の専門学校においてマンガ・アニメーション科を卒業し、専門士の称号を付与された外国人が、アニメ制作会社において、絵コンテ等の構成や原画の作成といった主体的な創作活動に従事するもの。
- 本邦の専門学校においてマンガ・アニメーション科を卒業し、専門士の称号を付与された外国人が、アニメ制作会社において、入社当初の6月程度背景の色付け等の指導を受けながら行いつつ、その後は絵コンテ等の構成や原画の作成といった主体的な創作活動に従事するもの。
許可事例 ファッション・デザイン分野
- 本邦の専門学校においてデザイン科を卒業し、専門士の称号を付与された外国人が、デザイン事務所においてデザイナーとして創作業務に従事するもの。
- 大学の工学部を卒業した外国人が、自動車メーカーにおいてカーデザイナーとして自動車デザインに係る業務に従事するもの。
- 本邦の専門学校においてデザイン科を卒業し、専門士の称号を付与された外国人が、服飾業を営む会社においてファッションコーディネーターとして商品の企画販促や商品ディスプレイの考案等に従事するもの。
- 本邦の専門学校においてデザイン科を卒業し、専門士の称号を付与された外国人が、服飾業を営む会社の海外広報業務を行う人材として採用された後、国内の複数の実店舗で3か月間販売・接客に係る実地研修を行い、その後本社で海外広報業務に従事するもの。
- 本邦の専門学校においてデザイン科を卒業し、専門士の称号を付与された外国人が、服飾業を営む会社において、パタンナーとして、裁断・縫製等の制作過程を一部伴う創作活動に従事するもの。
不許可事例 アニメーション分野
- 本邦の専門学校においてマンガ・アニメーション科を卒業し、専門士の称号を付与された外国人が、アニメ制作会社において、主体的な創作活動を伴わない背景画の色付け作業等の補助業務にのみ従事するもの。
不許可事例 ファッション・デザイン分野
- 本邦の専門学校においてデザイン科を卒業し、専門士の称号を付与された外国人が、服飾業を営む会社において、主体的な創作活動を伴わない裁断・縫製等の制作過程に従事するもの。
- 本邦の専門学校においてデザイン科を卒業し、専門士の称号を付与された外国人が、服飾業を営む会社の店舗においてもっぱら接客・販売業務に従事するもの。
- 本邦の専門学校において主に経理を学んで卒業し、専門士の称号を付与された外国人が、衣料品販売店においてもっぱら販売業務に従事するもの。
*出典元 >【出入国在留管理庁】「技術・人文知識・国際業務」の在留資格の明確化等について
別紙5(「クールジャパン」に関わる分野において就労しようとする留学生等に係る在留資格の明確化等について)
申請の際は、具体的な業務内容、学歴や実務経験を立証する書類のほか、デザインスキルをアピールする書類(ポートフォリオ、受賞歴等)の提出も有効です。
技術・人文知識・国際業務が、同時に、「興行に係る活動」や「その他の芸能活動(興行に係る活動以外の芸能活動)」でもあるといったケースがありますが、これは技術・人文知識・国際業務ビザではなく、興行ビザの対象となります。
たとえば、エンジニアやデザイナーとしての活動などで技術・人文知識・国際業務といえるものでも、「興行に係る活動」は、技術・人文知識・国際業務ビザではなく、興行ビザの対象となります。
なお、入管法で、技術・人文知識・国際業務ビザは「興行に掲げる活動を除く」とされています。
本邦の公私の機関との契約に基づいて行う理学、工学その他の自然科学の分野若しくは法律学、経済学、社会学その他の人文科学の分野に属する技術若しくは知識を要する業務又は外国の文化に基盤を有する思考若しくは感受性を必要とする業務に従事する活動(教授、芸術、報道、経営・管理、法律・会計業務、医療、研究、教育、企業内転勤、介護、興行に掲げる活動を除く。)
出入国管理及び難民認定法 別表第1の2の表
技術・人文知識・国際業務ビザの活動の範囲内でしたら、副業やアルバイト等をすることができます。
また、副業やアルバイト等の内容が、技術・人文知識・国際業務ビザの活動の範囲外となる場合でも、出入国在留管理局へ資格外活動許可の申請をして、許可を受ければすることができます。
技術・人文知識・国際業務ビザの方が受ける資格外活動許可は、基本的には、企業等の名称・所在地・業務内容などを個別に指定して許可される個別的許可です。単純労働や風俗営業等はできません。
たとえば、飲食店・コンビニ・スーパーでのアルバイトといった、いわゆる単純労働はできませんが、大学講師の副業やアルバイト等は許可される可能性が高いです。
なお、会社都合による解雇等で退職した場合などは、単純労働でも、1週について28時間以内であれば、企業等の名称・所在地・業務内容などを指定せずに許可される包括的許可を受けられることがあります。
社内規定等で副業を禁止している企業もあります。
お勤めの会社等への事前確認も忘れずに。
7. 技術・人文知識・国際業務ビザ:まとめ
最後に、技術・人文知識・国際業務ビザの重要ポイントをまとめました。
- 技術・人文知識・国際業務ビザは、就労ビザの中でもっとも一般的なビザ(在留資格)で、一定水準以上の専門的な能力を必要とする仕事が該当する。通称「技人国(ぎじんこく)」。
- たとえば、エンジニア・プログラマーなどの理系の業務(技術)、営業・経理・貿易・企画などの文系の業務(人文知識)、翻訳・通訳・語学スクールの講師などの外国の考え方や感覚が必要な業務(国際業務)が該当する。
- 単純な業務、求人情報に「未経験可、すぐに慣れます。」とあるような業務、上陸許可基準の学歴または実務経験を満たしていない日本人が従事しているような業務は対象とならない。
- 「教授、芸術、報道、経営・管理、法律・会計業務、医療、研究、教育、企業内転勤、介護、興行」ビザの活動は、技術・人文知識・国際業務ビザの活動にに該当しない。
- 在留資格認定証明書交付申請は、「3. 技術・人文知識・国際業務ビザの要件(条件)」に該当していることに加えて、「4. 技術・人文知識・国際業務ビザの上陸許可基準」に適合している必要がある。
- 在留資格変更許可申請・在留期間更新許可申請は、「3. 技術・人文知識・国際業務ビザの要件(条件)」に該当していること、「4. 技術・人文知識・国際業務ビザの上陸許可基準」に原則として適合していることに加えて、「5. 変更・更新のガイドライン」の事項等が考慮される。
- 在留期間は「5年、3年、1年、3ヶ月」の中で、いずれかの期間が決定される。
- 申請書類(必要書類)は、出入国在留管理庁(入管)のページで最新のものを確認する。
>【出入国在留管理庁】各種手続 - 副業やアルバイト等は、技術・人文知識・国際業務ビザの活動の範囲内であればすることができる。
また、活動の範囲外の副業やアルバイト等でも、資格外活動許可を受ければすることができる。ただし、単純労働は基本的に許可されない。
以上、行政書士が解説しました。技術・人文知識・国際業務ビザのくわしい内容は、無料そうだんでも個別にご案内しています。どうぞお気軽にお声がけください。