高度専門職 Highly Skilled Professional
この記事は、高度専門職ビザのメリット、要件(条件)、ポイント計算、変更・更新、申請時の必要書類などについて解説しています。
高度専門職ビザの申請をお考えの方は、ぜひ参考にしてみてください。
執筆者:行政書士/宇佐見崇
もくじ
1. 高度専門職ビザとは?
高度専門職ビザは、高度の専門的な能力をもつ外国人のためのビザ(在留資格)です。
高度の専門的な能力をもつか否かは、学歴・職歴・年収などをポイントに換算して、ポイントの合計が70点以上あるかないかで判断されます。
2. 高度専門職ビザのメリット
高度専門職ビザには、次のようなメリットがあります。
- 複合的な就労活動が可能
たとえば、大学で研究活動をしながら関連する会社を経営するなど、複数の就労ビザにまたがるような働き方ができます。 - はじめから在留期間「5年」
在留期間の中でもっとも長い、5年が一律に決定されます(更新可)。 - 永住者ビザを取得しやすい
永住者ビザを取得するには「原則として引き続き10年以上日本に在留していること」が必要ですが、高度専門職外国人は特例によってこの年数が短くなります。 - 配偶者のフルタイム就労
配偶者(妻・夫)がフルタイムで仕事をするときに、一定の要件のもと特定活動ビザ(告示33号)を取得できます。この特定活動ビザには、学歴・職歴の要件がありません。 - 親の在留
7歳未満の子がいるときや子の出産をひかえているときに、高度専門職外国人またはその配偶者の親が、一定の要件のもと特定活動ビザ(告示34号)を取得できます。 - 外国人家事使用人の雇用
外国人の家事使用人(ハウスキーパー・メイドなど)を雇用するときに、外国人家事使用人が一定の要件のもと特定活動ビザ(告示2号、2号の2、2号の3)を取得できます。 - 入国・在留手続の優先処理
在留資格認定証明書交付申請は申請から10日以内、在留資格変更許可申請・在留期間更新許可申請は申請から5日以内を目安に、優先的にスピード処理されます。
*申請書類が不足しているとき・申請内容に疑義があるときなどを除く。
- 1号の活動と併せて、ほぼすべての就労ビザの活動を行うことができます。
- 在留期間が無期限となります。
- 上記、高度専門職1号の③から⑥までのメリットがあります。
3. 高度専門職ビザの要件(条件)
高度専門職ビザは、日本の法律(出入国管理及び難民認定法)で次のように定められています。
日本での活動が次に該当していることが、高度専門職ビザの要件(条件)となります。
高度の専門的な能力を有する人材として法務省令で定める基準に適合する者が行う次のイからハまでのいずれかに該当する活動であって、我が国の学術研究又は経済の発展に寄与することが見込まれるもの
イ 法務大臣が指定する本邦の公私の機関との契約に基づいて研究、研究の指導若しくは教育をする活動又は当該活動と併せて当該活動と関連する事業を自ら経営し若しくは当該機関以外の本邦の公私の機関との契約に基づいて研究、研究の指導若しくは教育をする活動
ロ 法務大臣が指定する本邦の公私の機関との契約に基づいて自然科学若しくは人文科学の分野に属する知識若しくは技術を要する業務に従事する活動又は当該活動と併せて当該活動と関連する事業を自ら経営する活動
ハ 法務大臣が指定する本邦の公私の機関において貿易その他の事業の経営を行い若しくは当該事業の管理に従事する活動又は当該活動と併せて当該活動と関連する事業を自ら経営する活動
出入国管理及び難民認定法 別表第1の2の表
- 高度専門職1号は、高度の専門的な能力を有する人材として法務省令で定める基準に適合する者が行う、次のイロハのいずれかの活動で、かつ、日本の学術研究または経済の発展に寄与することが見込まれるものが対象となります。
イ 高度学術研究
ロ 高度専門・技術
ハ 高度経営・管理 - 「法務省令で定める基準」は、後記「5. 高度専門職ビザのポイント計算」を参照してください。
- イ(高度学術研究)は、大学教授・研究者・学校教員などが代表的な例です。
主活動は、特定の日本の公私の機関との契約に基づいて行う、研究をする活動・研究の指導をする活動・教育をする活動(*)です。
*学校等での活動となる教授ビザや教育ビザとは異なり、民間企業で社内研修等の教育をする活動も該当します。
主活動と併せて、主活動と関連する事業を経営する活動や、主活動を行う機関以外の機関と契約して、研究をする活動・研究の指導をする活動・教育をする活動を行うこともできます。 - ロ(高度専門・技術)は、エンジニア・プログラマーなどの理系の仕事をする方や、営業・経理・企画などの文系の仕事をする方が代表的な例です。
高度専門職ビザの中では、この「ロ」の活動を行う人が最も多くいます。
主活動は、特定の日本の公私の機関との契約に基づいて行う、自然科学または人文科学の分野に属する知識または技術を要する業務に従事する活動(*)です。
*技術・人文知識・国際業務ビザの活動と似ていますが、技術・人文知識・国際業務ビザとは異なり、国際業務が主活動に含まれないこと、「教授、芸術、報道、経営・管理、法律・会計業務、医療、研究、教育、企業内転勤、介護、興行、宗教、技能」ビザの活動が主活動となりえることに違いがあります。
*技能ビザに該当する航空機操縦士(パイロット)の業務は、自然科学の分野に属する航空科学や航空気象学の知識を必要とするのが通常であることから、「ロ」にも該当するとして取り扱われます。
主活動と併せて、主活動と関連する事業を経営する活動を行うこともできます。 - ハ(高度経営・管理)は、代表取締役・取締役・監査役などの経営者、部長・支店長・工場長などの管理者が代表的な例です。
事業の運営に関する重要事項の決定・事業の執行もしくは監査の業務に従事する役員、部に相当するもの以上の内部組織の管理的業務に従事する職員など、事業の経営や管理を実質的に行う者が該当します。
主活動は、特定の日本の公私の機関において、事業の経営または管理に従事する活動(*)です。
*経営・管理ビザの活動と似ていますが、経営・管理ビザとは異なり、法律・会計業務ビザに掲げる資格(①弁護士、②司法書士、③土地家屋調査士、④外国法事務弁護士、⑤公認会計士、⑥外国公認会計士、⑦税理士、⑧社会保険労務士、⑨弁理士、⑩海事代理士、⑪行政書士)がなければ法律上行うことができない事業の経営または管理に従事する活動が主活動に含まれます。
主活動と併せて、主活動と関連する事業を経営(管理は含まれません)する活動を行うこともできます。
たとえば、主活動として指定された会社の役員として活動しながら、主活動と関連する子会社を設立して経営する、同種同業の他社の社外取締役を兼ねるといったことが可能です。 - 指定された機関に変更があるときは、在留資格変更許可申請が必要です。
1号イロハは、2号と異なり「法務大臣が指定する本邦の公私の機関」とされていて、交付される指定書により主活動に係る機関が指定されます。
そのため、転職等により指定された機関に変更があるときは、在留資格変更許可を受ける必要があります。 - 在留中の活動内容に変更があるときは、在留資格変更許可申請が必要です。
高度専門職ビザは、1号イ、1号ロ、1号ハ、2号でそれぞれ別のビザとして扱われます。そのため、たとえば、1号ロの活動から1号ハの活動に変更するときは、在留資格変更許可を受ける必要があります。 - 1号イロハの在留期間は5年です。
1号に掲げる活動を行った者であって、その在留が我が国の利益に資するものとして法務省令で定める基準に適合するものが行う次に掲げる活動
イ 本邦の公私の機関との契約に基づいて研究、研究の指導又は教育をする活動
ロ 本邦の公私の機関との契約に基づいて自然科学又は人文科学の分野に属する知識又は技術を要する業務に従事する活動
ハ 本邦の公私の機関において貿易その他の事業の経営を行い又は当該事業の管理に従事する活動
ニ イからハまでのいずれかの活動と併せて行う教授、芸術、宗教、報道、法律・会計業務、医療、教育、技術・人文知識・国際業務、介護、興行、技能、特定技能2号に掲げる活動(イからハまでのいずれかに該当する活動を除く。)
出入国管理及び難民認定法 別表第1の2の表
- 高度専門職2号は、1号の活動を行った者で、その在留(3年以上)が日本の利益に資するものとして法務省令で定める基準に適合するものが行う、イロハニの活動が該当します。
- 「法務省令で定める基準」は、後記「5. 高度専門職ビザのポイント計算」を参照してください。
- イロハの活動は、1号イロハの活動の主活動(高度学術研究、高度専門・技術、高度経営・管理)とほぼ同じです。
ただし、「本邦の公私の機関」については、1号イロハと異なり「法務大臣が指定する本邦の公私の機関」とされていません。
そのため、転職等により機関に変更があるときでも、在留資格変更許可申請を行う必要はありません。
*所属機関に変更があるときの、出入国在留管理局への「所属機関に関する届出」は必要です。 - ニの活動は、イロハのいずれかの活動と併せて行う「教授、芸術、宗教、報道、法律・会計業務、医療、教育、技術・人文知識・国際業務、介護、興行、技能、特定技能2号」ビザの活動(イロハのいずれかに該当する活動を除く)です。
- 2号への在留資格変更許可申請の要件は次のとおりです。
①申請人が行おうとする活動が、2号の活動に該当すること
②ポイントの合計が70点以上であること、1号ロハで在留していた者は年収300万円以上であること
③1号(又は高度人材外国人としての特定活動)で日本に3年以上在留し、その在留資格に該当する活動を行っていたこと
*過去に1号で日本に3年以上在留していれば、在留資格変更許可申請を行う時点でのビザが高度専門職1号でなくても(たとえば、永住者ビザ等でも)差し支えありません。
④素行が善良であること
⑤当該外国人の在留が日本国の利益に合すると認められること - 2号の在留期間は無期限です。
*在留期間は無期限ですが、在留カードの有効期間は交付の日から7年間となります。
在留カードの有効期間満了日がせまっているときは、有効期間満了日の2ヶ月前から有効期間満了日までに、出入国在留管理局へ「在留カードの有効期間の更新申請」をする必要があります。
4. 高度専門職ビザの許可基準
高度専門職1号の在留資格認定証明書交付申請は、上記「3. 高度専門職ビザの要件(条件)」に該当していることに加えて、次の上陸許可基準に適合していることが必要です。
なお、高度専門職1号への在留資格変更許可申請、高度専門職1号の在留期間更新許可申請についても、上陸許可基準に原則として適合していることが求められます。
申請人が出入国管理及び難民認定法別表第1の2の表の高度専門職の項の下欄の基準を定める省令(平成26年法務省令第37号)第1条第1項に掲げる基準に適合することのほか、次の各号のいずれにも該当すること。
- 次のいずれかに該当すること。
イ 本邦において行おうとする活動が法別表第1の1の表の教授の項から報道の項までの下欄に掲げる活動のいずれかに該当すること。
ロ 本邦において行おうとする活動が法別表第1の2の表の経営・管理の項から技能の項までの下欄に掲げる活動のいずれかに該当し、かつ、この表の当該活動の項の下欄に掲げる基準に適合すること。 - 本邦において行おうとする活動が我が国の産業及び国民生活に与える影響等の観点から相当でないと認める場合でないこと。
上陸基準省令
- 「基準を定める省令」は、後記「5. 高度専門職ビザのポイント計算」を参照してください。
- ①イは、日本において行おうとする活動が「教授、芸術、宗教、報道」ビザ(上陸許可基準がないビザ)の活動のいずれかに該当することです。
- ①ロは、日本において行おうとする活動が「経営・管理、法律・会計業務、医療、研究、教育、技術・人文知識・国際業務、企業内転勤、介護、興行、技能」ビザ(上陸許可基準があるビザ)の活動のいずれかに該当し、さらに、そのビザの上陸許可基準にも適合することです。
- 主活動、主活動と併せて行う活動のいずれもが、①イのビザの活動に該当すること又は①ロのビザの活動に該当し、かつ、その上陸許可基準に適合することが求められます。
高度専門職2号への在留資格変更許可申請については、次の変更許可基準に適合していることが必要です。
出入国管理及び難民認定法第20条の2第2項の基準は、同条の申請を行った者が出入国管理及び難民認定法別表第1の2の表の高度専門職の項の下欄の基準を定める省令(平成26年法務省令第37号)第2条第1項に掲げる基準に適合することのほか、申請人が本邦において行おうとする活動が我が国の産業及び国民生活に与える影響等の観点から相当でないと認める場合でないこととする。
変更基準省令
- 「基準を定める省令」は、後記「5. 高度専門職ビザのポイント計算」を参照してください。
5. 高度専門職ビザのポイント計算
高度専門職ビザは、法務省令で定める基準(基準を定める省令)に適合する方でないと取得できません。
法務省令は、1号イ(高度学術研究)、1号ロ(高度専門・技術)、1号ハ(高度経営・管理)それぞれの活動に応じて、学歴・職歴・年収などの項目ごとにポイントを設定し「ポイントの合計が70点以上であること」、1号ロハについてはさらに「年収300万円以上であること」という基準を定めています。
\ ポイント計算をしてみる /
- ポイントの計算は、上記のポイント計算表や次のページを参照してください。
>【e-Gov法令検索】高度専門職省令 - 1号イ(高度学術研究)、1号ロ(高度専門・技術)の学歴ポイントで、博士号と修士号の両方を有している方は、30点となります。30点+20点=50点とはなりません。
- 学歴ポイントの「大学」には、短期大学が含まれます。
高等専門学校(高専)の卒業者・専修学校の専門課程卒業者(高度専門士)は「大学と同等以上の教育を受けた者」として学歴ポイントの対象となります。
*高度専門士は対象となりますが、専門士は対象となりません。
>【文部科学省】高度専門士の称号を付与する専修学校
>【文部科学省】専門士の称号を付与する専修学校 - 職歴ポイントの実務経験の年数は、職業としてその業務に従事した期間が該当します。
教育機関(夜間学部を除く)に所属している間にアルバイト的に従事した期間は含まれません。また、教育機関での研究期間・専攻期間も含まれません。 - 年収ポイントは、今後1年間に主たる所属機関から受ける報酬の年額です。
報酬は「一定の役務の給付の対価として与えられる反対給付」をいいます。
具体的には、原則として基本給と賞与(ボーナス)をいい、通勤手当・扶養手当・住宅手当などの実費弁償の性格を有するもの(課税対象とならないもの)は含まれません。
超過勤務手当は「一定の役務の給付の対価として与えられる反対給付」ですが、申請の時点でどの程度の超過勤務が生じるかは不確かなことから、ポイント計算の報酬には含まれません。
在留期間更新許可申請についても、ポイント計算の報酬は予定年収に基づいて判断されますので、過去に支給された超過勤務手当は含まれません。
外国の会社等から日本の会社等に転勤する場合で、報酬が外国の会社等から支払われるときは、外国の会社等から支払われる報酬がポイント計算の報酬に含まれます。 - 年齢ポイントは、在留資格認定証明書交付申請書に記入の入国予定日または在留資格変更許可等の申請時の年齢で計算します。
- ボーナス①「研究実績」の学術論文データベースは、オランダのエルゼビア社の「SciVerse Scopus(サイバース・スコーパス)」などが利用されています。
- 高度経営・管理分野のボーナス②は、監査役・会計参与は対象となりません。
また、代表取締役は取締役でもありますが、10点となります。10点+5点=15点とはなりません。 - 高度専門・技術分野のボーナス③「日本の国家資格」は、業務独占資格や名称独占資格といわれる資格(弁護士・医師・公認会計士など、資格を有しなければ資格に係る業務を行うことができず、又は資格に係る名称を使うことができないもの)が対象となります。
また、次の「IT告示」の情報処理技術に関する試験・資格も対象となります。
>【出入国在留管理庁】IT告示
*いずれも従事する業務に関連するものでない場合は、加算されません。 - ボーナス④「イノベーションを促進するための支援措置」は、次のページを参照してください。
>【出入国在留管理庁】イノベーション促進支援措置一覧 - ボーナス⑤「試験研究費等比率が3%超の中小企業」は、試験研究費等(試験研究費・開発費)の申請日の前事業年度(申請日が前事業年度経過後2ヶ月以内である場合は、前々事業年度)の経費が、売上高または事業所得の3%を超えている中小企業です。
これらの企業はイノベーションの創出の促進が期待される研究開発型の中小企業であると考えられることから、当該企業に勤務する方はポイント付与の対象となります。 - ボーナス⑥「職務に関連する外国の資格等」は次のページを参照してください。
>【出入国在留管理庁】外国の資格・表彰等一覧 - ボーナス⑦「本邦の高等教育機関」は、日本の大学のことです。短期大学・大学院・大学の専攻科・大学の別科・大学に附置された研究施設が含まれます。日本の大学に準ずる機関(防衛大学校・航空大学校など )は含まれません。
ボーナス⑦は学歴ポイントと並立します。たとえば、日本の大学院を修了して修士の学位を有している方は、20点(学歴)+10点(ボーナス⑦)=30点となります。 - ボーナス⑧「日本語を専攻して」は、外国の大学(短期大学・大学院を含む)において、日本語に関する学問(日本語学・日本語教育学等)に係る学部・学科・研究科等を専攻したことを意味します。
- ボーナス⑩「成長分野における先端的事業」は、IoTや再生医療等の成長分野の事業で、所管省庁が関与している先端プロジェクトが対象となります。
>【出入国在留管理庁】将来において成長発展が期待される分野の先端的な事業一覧 - ボーナス⑪「法務大臣が告示で定める大学」は、次の大学が該当します。
>【出入国在留管理庁】加点対象となる大学一覧(世界大学ランキング)
>【文部科学省】スーパーグローバル大学創成支援事業(トップ型・グローバル化牽引型)において補助金の交付を受けている大学
>【出入国在留管理庁】外務省が実施するイノベーティブ・アジア事業において「パートナー校」として指定を受けている大学
*ボーナス⑦「本邦の高等教育機関において学位を取得」と重複して加算することが可能です。 - ボーナス⑫「法務大臣が告示で定める研修」は、外務省が実施するイノベーティブ・アジア事業の一環として、外務省から委託を受けた独立行政法人国際協力機構(JICA)が日本で実施する研修で、研修期間1年以上のものが該当します。
>【外務省】イノベーティブ・アジア事業
*日本の大学または大学院の授業を利用して行われる研修に参加した方は、ボーナス⑦「本邦の高等教育機関において学位を取得」と重複して加算することはできません。 - 企業の役員としての契約に基づいて、自然科学・人文科学の分野に属する知識・技術を必要とする業務を主活動として行う方は、1号ロ(高度専門・技術)、1号ハ(高度経営・管理)のうち、有利な方を選択してポイント計算をすることができます。
6. 変更・更新のガイドライン
在留資格変更許可申請・在留期間更新許可申請は、上記「3. 高度専門職ビザの要件(条件)」に該当していること、上記「4. 高度専門職ビザの上陸許可基準等」に原則として適合していることに加えて、次の事項が考慮されます。
なお、次の事項は代表的な考慮要素です。これらのすべてに該当する場合でも、すべての事情を総合的に考慮した結果、変更・更新の申請が不許可となることもあります。
- 現に有する在留資格に応じた活動を行っていたこと
申請人である外国人が、現に有する在留資格に応じた活動を行っていたことが必要です。
例えば、除籍・退学後も在留を継続していた留学生については、現に有する在留資格に応じた活動を行わないで在留していたことについて正当な理由がある場合を除き、消極的な要素として評価されます。 - 素行が不良でないこと
素行については、善良であることが前提となり、良好でない場合には消極的な要素として評価されます。
具体的には、退去強制事由に準ずるような刑事処分を受けた行為、不法就労をあっせんするなど出入国在留管理行政上看過することのできない行為を行った場合は、素行が不良であると判断されることとなります。 - 独立の生計を営むに足りる資産または技能を有すること
申請人の生活状況として、日常生活において公共の負担となっておらず、かつ、その有する資産または技能等から見て将来において安定した生活が見込まれること(世帯単位で認められれば足ります。)が求められます。
仮に公共の負担となっている場合でも、在留を認めるべき人道上の理由が認められる場合には、その理由を十分勘案して判断されることとなります。 - 雇用・労働条件が適正であること
就労している(しようとする)場合には、アルバイトを含めその雇用・労働条件が、労働関係法規に適合していることが必要です。
なお、労働関係法規違反により勧告等が行われたことが判明した場合は、通常、申請人である外国人に責はないため、この点を十分に勘案して判断されることとなります。 - 納税義務を履行していること
納税の義務がある場合には、当該納税義務を履行していることが求められ、納税義務を履行していない場合には消極的な要素として評価されます。
例えば、納税義務の不履行により刑を受けている場合は、納税義務を履行していないと判断されます。
なお、刑を受けていなくても、高額の未納や長期間の未納などが判明した場合も、悪質なものについては同様に取り扱われます。 - 入管法に定める届出等の義務を履行していること
入管法上の在留資格をもって日本に中長期間在留する外国人の方は、入管法第19条の7から第19条の13まで、第19条の15及び第19条の16に規定する在留カードの記載事項に係る届出、在留カードの有効期間更新申請、紛失等による在留カードの再交付申請、在留カードの返納、所属機関等に関する届出などの義務を履行していることが必要です。
<中長期在留者の範囲>
入管法上の在留資格をもって日本に中長期間在留する外国人で、次の①~⑤のいずれにも該当しない者
① 3ヶ月以下の在留期間が決定された者
② 短期滞在の在留資格が決定された者
③ 外交・公用の在留資格が決定された者
④ ①②③に準ずる者として法務省令で定めるもの
⑤ 入管特例法に基づく特別永住者
在留資格の変更、在留期間の更新許可のガイドライン
7. 高度専門職ビザの質問
高度専門職ビザについて、よくある質問をご紹介します。
出入国在留管理局に提出する基本的な申請書類については、次の出入国在留管理庁のページを参照してください。
当事務所では、出入国在留管理庁のページに記載されている基本的な申請書類に加えて、申請理由書や状況に応じた申請書類などを提出しています。
出入国在留管理庁のページに記載されている基本的な申請書類だけでも受け付けてもらえますが、不許可や審査期間の長期化などのリスクを避けるために、申請理由書や状況に応じた申請書類などを提出して、法令の要件をクリアしていることを十分に立証しましょう。
高度専門職ビザ1号と2号の違いについては、次の表を参考にしてみてください。
1号 | 2号 | |
---|---|---|
就労活動 | 複合的な就労活動が可能 |
ほぼ全ての就労ビザの活動が可能 |
所属機関の指定 | あり |
なし |
在留期間 | 5年(更新可) | 無期限 |
在留資格認定証明書の交付 | あり | なし |
入国・在留手続の優先処理 | あり | なし |
高度専門職ビザ2号と永住者ビザは、主に次の点に違いがあります。在留期間が無期限な点は共通します。
2号 | 永住者 | |
---|---|---|
①カテゴリー | 就労ビザ |
身分系のビザ |
②就労制限 | あり |
なし |
③所属機関に関する届出 | 必要 |
不要 |
④配偶者が取得できるビザ | 特定活動ビザ (告示33号) または 家族滞在ビザ |
永住者の配偶者等ビザ |
⑤親の在留 | 可 *特定活動ビザ (告示34号) |
原則不可 |
⑥外国人家事使用人のビザ | 取得可 *特定活動ビザ (告示2号、2号の2、2号の3) |
原則取得不可 |
⑦審査期間 | 平均2ヶ月 | 4ヶ月程度から |
*高度専門職ビザ2号は、該当する活動を継続して6ヶ月以上行っていない場合に、ビザを取り消されることがあります(正当な理由がある場合を除く)。
永住者ビザの方に魅力を感じる人が多いかもしれませんが、高度専門職ビザには、⑤親の在留が認められる、⑥外国人家事使用人のビザを取得できるといった永住者ビザにはないメリットがあります。
また、⑦審査期間が永住者ビザより短い点もうれしいですね。
状況にあわせて適した方を選択しましょう。
高度専門職ビザでの在留中は、常に70点以上を維持していることは求められません。在留中に年収・年齢などのポイントが減少して70点を下回ったとしても、直ちに在留できなくなることはありません。
ただし、高度専門職1号から2号への変更や高度専門職1号の在留期間(5年)を更新する際に70点を下回っているときは、変更または更新の申請は許可されません。
特別高度人材制度(J-Skip)は、2023年4月にスタートした制度で、学歴または職歴と年収が一定の水準以上であれば高度専門職ビザを取得できる制度です。
要件(条件)や申請時の必要書類などは、次の出入国在留管理庁のページで確認してみてください。
>【出入国在留管理庁】特別高度人材制度(J-Skip)
高度専門職ビザの方は、特例によって永住者ビザを取得しやすくなっています。
具体的には、永住者ビザを取得するには「原則として引き続き10年以上日本に在留していること」が要件となりますが、「ポイント計算70点以上で、高度専門職ビザで3年以上継続して日本に在留」または「ポイント計算80点以上で、高度専門職ビザで1年以上継続して日本に在留」している方は、特別にこの要件をクリアします。
*上記は永住許可の要件のひとつです。
永住権とは?:日本の永住者ビザ(在留資格)を行政書士が解説!
2023年末時点で、高度専門職ビザの方は全国で23,958人います。1号ロ(高度専門・技術)が17,978人と最も多く、全体の約75%を占めています。
- 1号イ(高度学術研究): 2,281人
- 1号ロ(高度専門・技術): 17,978人
- 1号ハ(高度経営・管理): 2,219人
- 2号: 1,480人
- 合計: 23,958人
2023年末時点
8. 高度専門職ビザ:まとめ
最後に、高度専門職ビザの重要ポイントをまとめました。
- 高度専門職ビザは、高度の専門的な能力をもつ外国人のためのビザ(在留資格)。
- 高度専門職ビザには「在留期間が5年または無期限」「永住者ビザを取得しやすい」などのメリットがある。
- 高度専門職ビザを取得するには、ポイント計算で70点以上が必要となる。
- 在留資格認定証明書交付申請は、「3. 高度専門職ビザの要件(条件)」に該当していることに加えて、「4. 高度専門職ビザの許可基準」に適合している必要がある。
- 在留資格変更許可申請・在留期間更新許可申請は、「3. 高度専門職ビザの要件(条件)」に該当していること、「4. 高度専門職ビザの許可基準」に原則として適合していることに加えて、「6. 変更・更新のガイドライン」の事項等が考慮される。
- 申請書類(必要書類)は、出入国在留管理庁(入管)のページで最新のものを確認する。
>【出入国在留管理庁】申請書類等について
以上、行政書士が解説しました。高度専門職ビザのくわしい内容は、無料そうだんでも個別にご案内しています。どうぞお気軽にお声がけください。